今日は彼と私の休日が重なって、私は彼の部屋に来ていた。
ソファーに2人腰掛けて、彼の腕が私の脇からお腹にかけて伸びてくると私の身体は自然と彼に寄り掛かった状態になる。ゆったりと進む時間に目を閉じていれば、携帯の着信音がけたたましく鳴り響いた。
私は携帯を取ろうと身体を起こし手を伸ばした。隣の彼がチッと舌打ちする音が聞こえてチラリと彼を見遣る。口パクで「ごめんね」っと言って携帯を開きもしもしと出れば、耳元から聞こえてきたのは休日出勤していたらしい同僚の男子社員だった。
要件を話し終え、少したわいない会話をしていれば暫くの間はおとなしくサッカー雑誌を読んでいた彼が、私の肩越しに顔を寄せてきた。咄嗟に身体を捩って動こうとするのだけど、私の肩越しの服をぐっと引っ張って剥き出しになった肌に、ちゅっとくちづけて来た。
「んっ!?」
おもわず声が漏れて、同僚が一瞬言葉に詰まったのがわかる。
私は目で彼に訴えながら自分の身体を捩って動こうとするのだけど、お腹に回った腕から逃れる事が出来ずに、かえって力を込められる。
(ど、どうしよう…このままじゃ…)
耳元からは同僚の心配するような声が聞こえてきて、私は何でもないと言いながら顔を彼から逸らそうとする。
突然、彼が私の耳元にくちびるを寄せてフッと笑った。
「…俺を無視するなんて、いい度胸だなっ!」
ゾワリと鼓膜に響く彼の声。
そして…ねっとりと耳の淵を舐め上げられて、中まで蹂躙する彼の舌に私の意識は彼にしか向かなくなってしまっていた。
握っていた携帯は彼の手に奪われて、パタンと閉じられてしまった。
その拍子にソファーに押し倒されて、目を細めて私をジッと見詰める彼の顔。
「…持田…さん?」
開いた唇に押しあてられる彼の唇が、ちゅっちゅっと上唇を吸い、下唇も吸いながら右に左に何度も角度を変えてくちづけてくる。
「んっ、んぅ…」
啄ばむように軽く触れていた唇が、だんだん物足りなくなってきた頃、突然舌を差し込まれて口内を犯される。
もっと、もっとー。
徐々に深くなるくちづけに酔いしれていれば、不意に焦らすように軽いくちづけに変わる。
そういうタイミングは絶妙に上手い彼に、私はいつもキスだけで翻弄されてしまう。
くちゅっ…
唇が離れてそっと目を開ける。
「…持田さん…?なんで…」やめちゃうの?っと言おうとした私に、彼はとても意地の悪い笑みを見せた。
ドキドキと早鐘を打つ私の心臓。なんだか悔しい気持ちでいっぱいになる。
私ばっかりー。
夢中になるのも、切なくなるのも…欲しいと思うのも余裕がないのもいつも私。
そんな風に考えていたからか、目頭がツンっとして涙が出そうになるから、それを必死に我慢する。
そんな少し表情を歪ませた私に、ニヤリと笑みを向けていた彼が、スッと真顔に変わって私の顎を掴み深く唇を押しあててきた。
息が苦しくなるのを彼の肩口に手を充て、ドンドンっと叩いて訴えてみるものの一向に唇は離れてくれない。
漏れる吐息までも許さないとばかりにくちづける彼は、私の手を掴み指を絡ませた。
反り返った顎から、彼の手が首筋を撫で胸をやわやわと揉み出せば、息が苦しくて解放されたいはずなのに、それすらも気持ちよく感じてくる。
やっと解放された唇からハァっと息を漏らすと、ボーッとしたまま彼を見上げた。
「…そういう顔、他のヤツ絶対みせんなよっ」
ポカンとしている私の顔を覗き込んでくる彼は、やっぱりいつもの持田さんで…コツンとお互いの額と額がぶつかって、握られていた指にきゅっと力を込められた。
「…はい…」
一言返事をして目を閉じれば、フッと息を付いた彼が。
「まっ、誰にも見せる気ねーけど」
そう言ってまた、私は彼のキスに翻弄される。
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