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再びこの世界に生まれるなんて、思っていなかった。
3度目の人生は、1度目と同じ現代。
私の名前は1度目と同じ「れん」なのだが、苗字は豊臣のままだった。
そして1度目とは違い、私に兄ができた。兄の名は「秀吉」。
1度目は画面の中で、2度目は夢の中でしか関わりのなかったあの秀吉に、ついにこうして生きて出会うことができた。
兄の秀吉は、とても尊敬できる人間だった。優しくて強くて頭が良い。
私も、2度も人生を経験しているからか勉強はできる方ではあったがそれでも兄にはかなわなかった。
そんな兄とも、もう5年ほどあっていない。
兄は大学進学と同時に都会に出てしまった。忙しいようであまり家には帰って来なかった。来たとしても私とはすれ違ってしまっていて全く会えていない。
しかし、私も高校卒業と同時に都会への就職が決まった。
両親は兄と同じように進学してほしかったようだが、私は大学に行くことよりもほかにしたいことがあった。
"豊臣秀吉"が居るならば、きっと。
「来世でも君と出会いたい」
出会うべき来世に今、私はいるのだ。
だからきっと、彼も、彼らもいるのだと信じてずっと生きてきた。
今は戦国の世ではない。
平和なこの世界でも出会えることを夢見て、私は兄の元へと向かった。
前世・現世・来世
(再び彼らと)
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