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「Maestro,コーヒーです」


「ん、ありがとう」


Maestroは眉間にしわを寄せつつ目線を書類の積み上げられた机の、端の端、どうにかカップ1つ置けるほどの空いたところに向けた。私はそこにそれを置く。


「…ああ、ちょっと待ってくれ」


「はい」


コーヒーカップを置いて立ち去ろうとすると呼び止められた。


「これ、どう思う?」


Maestro - わが師、スティーブン・A・スターフェイズは一枚の書類を私に差し出した。どうやらそれは履歴書のようだ。


「”ジョニー・ランディス”?」


聞きなれない名前に、新入りなのかもしくは引き入れようとする新たな者なのか、と判断した。
その判断は正しかったようで、うん、と彼は頷く。その目は、どうだ、と私に問いかけている。

それに私は首を振った。横に。


「だめ?」


「だめ、とかではなく。私にそれを決める権限はないので」


私はあくまでこの秘密結社-ライブラ-に所属しているスティーブン・A・スターフェイズの秘書なのだ。ただの部下である。


「クラウス様にお聞きした方が良いのでは?」


「うーん」


苦笑い。

ふむ、この様子ならクラウス様は彼を引き入れる気満々なのか。


「まあ、そうなっちゃうんだろうけどねぇ…」


いいよ、認めよう。
そう呟いて彼は書類にサインをした。


「ところで、なまえ。僕はMaestroではなく、スティーブン、と呼んで欲しいんだけれどな」


「了解しました、スティーブン先生」


彼が眉にシワを寄せたのを確認し、私は改めて執務室のドアを閉じた。







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