春風が吹くとき
「ん……?」
なんとなく目が覚める。アイマスクを取ると、目の前には桜の木があり、1面ピンク色。
「なまえ…?」
さっきまでいたはずのなまえがいない。
起き上がって周りをみても、やはり居ない。
なまえは真選組に唯一いる女隊士だ。
彼女はオレと仲が良い。だが、それは歳が近いから。ただソレだけの事。
「…なんでィ…自分で来たいっていったのにねィ」
…数時間前…
『隊長!』
「なんですかィ?」
『お花見行きましょう!!』
「…?花見ならこの間皆でやったろィ?」
『え…いや、二人っきりで…なんですけど…』
「は?……」
『駄目ですか…?』
「…わかりやした。今からいきやすか」
『やったー!!』
あの時、余りになまえが可愛くて来てしまった。
…なのに、寝てしまった自分が情けない。
「…なまえ…好きでさァ…」
なんとなく、つぶやく。
恋なんて初めてで、とても面と向かっては言えない。
しかも、あいつ自身はオレの事など見てない。
今さっきだって舞い上がっているのを、なまえの笑顔に思わず赤面したのを隠すために狸寝入りしていただけだ。結果、本格的に寝てしまったが…。
だから、…なまえがいない今…、今なら。
『……隊長…あの、今のって…?』
アレ?
いつの間にか、なまえが目の前に居る。
「っ、なまえ…。ど、何処行ってたんでィ」
『せっかくのデートなのに、寝てる人が悪いんです。教えません』
「デート?」
今まで、少し仕事をサボったり遊びに行ったりした事はあったがデートは無い。
明確に、デートという行為はしたことがない、はずだが。
「…なまえ…?」
『そろそろ帰りましょうか?』
「…そうですねィ」
風が桜の花びらを巻き上げて何処かへさらって行った。
春風が吹く時… なにか素敵なことがおこりそうで….
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