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なるほど、スティールの言ったことが理解できた。
家を出て街を歩けば、そこかしこにおかしな人形がいた。DIOの手下とやらだろう、それもスタンドのようで一般人には見えていないらしい。級に襲ってこないのはまだ私をスタンド使いだと認識していないからだろう。もし私がスタンド使いだとばれたら大変なことになる。そうじゃなくても、街中に不良がわいているのが気になってしまう。宝を持つと周り全てが敵に見えてしまうような、そんな気分だ。
できるだけ普段と変わらないようにふるまうことでスタンド人形は回避できそうだ。しかし…。
「オイ、てめーチャラチャラした髪の色しやがって」
不良は回避できなかった。
私の髪は生まれつき金色だった。先祖が外人だったと母に聞いたが、日本で生まれ育った私にはコンプレックス以外の何物でのない。こうやってからまれるのだから。
「その髪、刈り取ってやるぜェー!」
不良の手に握られたナイフを、まるで他人事のように見た。そんなちびたナイフで何ができるというんだ。
「聞いてんのか、オイ…ッ!?!?」
「うるさい」
ゴッ、と靴の先が鳴った。
ナイフなんて持ち出されたらこっちだって防衛する権利はあるはずだ。先手必勝、不良の顎に蹴りを食らわせると、奴はその場に崩れ落ちた。
「まったくあぶないなあ」
コンクリートにカラリと落ちたナイフを拾うと、その隣りにカードが落ちているのに気が付いた。
「なにこれ、タロットカード…!?」
気が付けば周りに人が集まり始めている。人、なのかと疑うほどに生気を帯びていない。全員、まるで操られているかのようにうつろな目だ。
『逃げた方がよさそうだな』
ポケットの中からの声に我に返ると同時に、操られているらしい不良たちが襲ってくる。
「あーもー!『薙ぎ払えッ!ザ・ジョイキラー』!!!」
私の目の前に現れたスタンドは、そのまま私を守るように襲いくる敵を薙ぎ切った。切った、と言ってもさすがにみねうちだが。
とにかく退路ができた。人通りの少ない路地から大通りに出ると敵はもう追ってこないようだった。
『怪我をしたのか』
「少しね、っていうか街中で話しかけていいの?怪しまれない?」
『そうだった、気を付けるよ。…それにしても順応が早いな。もうスタンドを使いこなしてるのか』
「使いこなしてるわけじゃあなくて、試したって感じかな。この子のこと知りたいし」
でも今はおとなしくしておいてね、と願うと私のスタンドはふっと消えた。
自我はないようだが、たまにうめき声のようなものを上げる。私に従順である。パワーは高くないようだがスピードはあるようだ。攻撃方法は持っている刃物で相手を切り刻む、といったところか。
今わかっている情報はこの程度。自分の実力を見誤るわけにもいかないし、この能力で自分自身を滅ぼすわけにもいかない。
「どこか人目につかない場所はないかな」
『能力で遊ぶつもりか?遅刻するぞ』
「怪我してるし、少しくらい遅れても言い訳は可能だよね」
ラジオからはため息ともノイズとも取れない音が返ってきた。
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