怯えた瞳からとめどなく流れる涙を指で掬うと、虫でも追い払うのと同じ手つきで乱暴に振り払われた。 これが君と俺との関係の全て。 取り返しのつかない過ちを犯した俺。言葉さえ交わしてくれない君。 「お前なんて生まれてこなきゃよかったのにって思う?」 君は思い切り眉を潜めて怪訝な表情を俺に向け、それから黙って布団を頭からすっぽりとかぶり、そっぽをむいてしまった。 肯定も否定もしない。それは君の優しさと残酷さ。 その通りだって、お前なんか生まれてこなきゃよかったって、言ってくれたっていいのに。それだけで俺は救われるのに。お前なんか必要ないって。お前なんか、お前なんか。俺なんか、俺なんか。 「身体、早く治るといいね」 「そう思うならもう来ないで」 「嫌だ。俺は君に毎日会いたい」 分厚い布団の下でも隠しきれないすすり泣きが聞こえる。 どうして君は、どうして俺は。 どうしてふたりは。 「俺は、栗松くんのことが」 けほけほと乾いた咳が聞こえると同時に小さな身体が丸くうずくまると、やっぱり俺は次の言葉を続けられなくなる。 ああ、言えない。今日もやっぱり言えない。 「お大事にね」 いつかわかって。遠い未来にもしも、君が俺のことを覚えていてくれたなら。 |