夜中、店長に泣きつかれながらフレンドリーショップに辞表を出し、街を出ていこうとしたら、思いがけない人物に遭遇した。



「…オーバ?」

「おうミノリ、久しぶり」



真っ赤な髪、特徴的なアフロ、横に連れ添うゴウカザル。
旅に出てから初めて、オーバが帰ってきた。
その明るい笑顔を見ていると、さっきまであんなに泣いたのにまた涙が溢れてくる。



「うえっ、うっ、オーバァァ……」



抱きついて顔をぐりぐり。
たぶん涙と鼻水でオーバの服はグシャグシャだ。
それでもオーバは突き放すことなく、なんだなんだと頭を撫でてくれた。



「なんで連絡よこさなかったんだよバカーー!」

「わりいわりい、泣くなよ」

「つかなんで今帰ってくんだよーー!」

「はあ!?」

「旅の途中でオーバに会うの、密かに楽しみにしてたのに!」

「なんだよお前、旅しようとしてたのか?」



頷くと、そうか、と頭をぽんぽん叩かれた。
…後ろでまがまがしい気配を感じる。
パチ、パチ、と電気のはじける音がした。
殺気だった空気が辺りを包みこむ。



「おう、デンジ
久しぶりだな」

「…オーバ」

「噂で聞いたんだがお前、バッジ配ってるみたいじゃねーか
どうしたんだよ」

「お前には関係ない」

「それが、関係あるんだな」



オーバを見上げると、 今まで見たことがない表情のオーバがいた。
旅で培ったものか、それと別のものなのだろうか。
それは次の言葉でわかることになる。



「シンオウリーグの四天王になった」

「……え」

「だからジムリーダーのお前を管轄する責任がある
自分の街の、それも幼馴染みのお前をな」



オーバが旅立った日、餞別と銘打ったバトルでデンジに勝った。
だから四天王になれるのは可能性のないものじゃなかった。
だって、シンオウ最強のジムリーダーを倒したのだから。
この表情は、四天王としての自信に溢れたものだ。
私はまた、取り残された。



「…はっ、四天王様にわざわざ来てもらって悪いが、もうやってねえよ」

「………………」



ミカンちゃんに、言われたから。
ふつふつと怒りがカムバックしてきた。
オーバから離れてデンジを見すえる。



「つーかなんでここにいんだよ」

「お前を止めにきたからに決まってんだろ」

「だからなんで止めに来んの
意味わかんない
幼馴染みが消えて寂しいならミカンちゃんといればいいじゃん」

「なんでミカンちゃんが出てくんだよ」

「あーはいはい、ストップ!」



言い争う私達をオーバが止める。
私とデンジを交互に見て、ため息をついた。



「なにお前ら
ケンカしてんの」

「「うるさい!」」

「…わかった
ならトレーナーらしくバトルで決着つけろ」

「はあ!?」



ジムリーダーに勝てと!?
相性も悪い、レベルも違うジムリーダーに!?
こいつバカだ。
だからドナルドに間違えられるんだ、このくるくるパーマ。



「使うポケモンは一匹
ジムリーダーのデンジはハンデとしてオレのヘルガー使え
それならいいだろ」

「…おいくるくるパーマ
お前四天王だろ
四天王のポケモンと私のブイゼル戦わせたら結果見えてんじゃねーか」

「くるくるっ……
ヘルガーならデンジも使いなれてないし、水タイプに有利な技も覚えてない
それに水タイプの相性最悪だろ
ミノリは才能あると思うし、いけるいける」

「…わかったよ』

「おいこらデコっぱち
勝手に了承してんじゃねえ」

「誰がデコっぱちだバカ」



そんなこんなで、なぜかジムリーダーとバトルすることになってしまった。
デコっぱちの隣りのレントラーがオロオロしているのに対し、くるくるパーマの隣りのゴウカザルはなんだか楽しそうだった。



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