ああ、もう本気でキレた。
なにが口を挟むなだ。
死ねちくしょう。

ずんずんと家へ向かって歩く。
頭の中はデンジへの怒りと、この先の旅路について埋められていた。
まず家行って仕たくして、フレンドリーショップ行って辞表を出し、道具を買いこむ。
よし、カンペキ。



「ミノリ、待てよ」



…なんか聞こえたけど、全力でフルシカト。
素知らぬ顔で歩いていく。
すると、肩をつかまれた。
むりやりデンジの方を向かされる。
重なった視線が異様に恥ずかしくて思えて、顔をそらした。
惚れた弱みってやつか……。
さっきまでの怒りが、水をかけられた火のようにプスプスと消えていく。



「…悪かった
旅なんか行くな」

「………………」

「お前がいなくなったら、オレはどうすればいい」

「…ジムリーダーすればいいじゃん」



…ああ、本当かわいくない。
素直にごめんって言っちゃえばいいのに、それができないほどひねくれてる。
デンジが私を必要だと言ってくれているようで嬉しい。
でも言うことを聞いたら負けのような気がして、私はデンジを振り切って歩きだした。
…切り替わった景色に、今一番嫌いな人物が映った。



「あら、デンジさん」

「…ミカンちゃん」



デンジに向かって手を振るミカンちゃん。
近くで見ると本当にかわいい。
こんにちは、と頭を下げられてうっかり返してしまった。



「あなたがミノリさんですか
よろしくお願いします」

「…………………」



なんで、私のこと知ってんの。
疑問が晴れるはずもなく、ミカンちゃんはデンジへ向き直る。
そして少し怒ったような表情で言った。



「デンジさん
ナギサジムでバトルもせずバッジを配っているそうじゃないですか
ダメですよ
ジムリーダーたるもの、キチンとバトルしてからバッジを渡さなくては」

「…そう、だな
わかったよ」




……おい。
おかしくねえか。
なんで私が言っても聞かなかったのに、ミカンちゃんが言ったらそんなあっさり言うこと聞くの。
…とことん人をコケにしやがって。



「ふざ、けんな、よ」

「…ミノリ?」



嗚咽が混じり、なんとも情けない声になってしまった。
デンジとミカンちゃんが驚いた顔で私を見るけど、感情が高ぶってどうしようもない私はそのまま続ける。



「なんなんだよ
どうせオレなんか必要じゃないくせに
止めんなよバカ
こんなのオレがバカみたいじゃねーか」

「…ミノリ、なに言ってんだ?」

「女の子らしくなくて悪かったな!
幼馴染みがミカンちゃんならよかったな!」



その場にいるのが辛くなって、逃げるように走った。
本当にかわいくない。
なんで私はこんななんだ。
泣きながら家へ駆けこむ。
ボールの中のブイゼルが心配そうに私を見ていた。



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