「ナマエー
ポッキーゲームしようぜ」



デンジが朝から妙にウキウキしてるなと思ったら、これだ。
おかしいと思ったんだ。

普段機械のことくらいしかこんなにはりきらないデンジが、こんなにもやる気になって瞳をキラキラ輝かせている。

もっと、もっと別のことだったら喜んで協力したけれど、ポッキーゲームなんて無理だ。
だってあんなに顔が近づくのに目は開けたままの、ただの羞恥プレイを誰がやるもんか。
そりゃ昔はふざけてやったよ?
でも今は曲がりなりにも、デンジのことが好きだから、恥ずかしくてできるわけない。



「…ムリ」

「やろうぜ」

「デンジ、ごめん
ほんとそういうのムリ」

「…なんでだよ」



デンジの表情が固くなって、機嫌が悪くなったのがありありとわかる。
でもそんなので私は屈するもんか。
嫌なものは嫌。
流されるなんてまっぴらだ。



「とにかく、やりたくない」



顔が赤いのを知られたくなくて、ぷい、とデンジから顔をそむけた。



「…なあ」



低く、重く、のしかかるような声色。
びくっと体がはねた。



「オレ達、付き合ってる意味ある?」



…わかってるよ。
全部、私が悪いの。
デンジは私の欲しいものをくれるのに、私がデンジの気持ちに応えられていないんだ。
デンジが求めてくれるのはもちろん嬉しいよ。
でも私はまだ慣れてないんだ。
それを、わかっていてほしかった。



「ナマエ、デンジ
なにやってんだ?」



重い雰囲気のなか、空気を読めないオーバが救世主に思えた。



「オーバ、ポッキーゲームしよ」

「は!?」

「……………」



デンジの手からポッキーを奪い取り、オーバの口にくわえさせる。
オーバの顔が真っ赤になってるのを無視して、ポッキーにかみついた。

その時。



「あっ」



至近距離に、デンジの横顔。
ガリとポッキーが折れた音と同時に、体に10万ボルトをくらったような衝撃が走り抜けた。



「お、おい
なんだ、これ!」



聞き覚えのある声。
驚いてその声の方向に視線を向けると、そこには。



「わ、私がいる」

「その声で私とか言うな気持ち悪い!」

「もしかして、オーバ?」



私が、焦ったようにぶんぶんと首を縦に振る。
なぜか、オーバが私の体になってしまったようだ。
もう一人、視界の端に赤いアフロが写る。

オーバが私で、オーバが目の前にいるということは……。



「ぎゃはははは!!
ア、アフロ、デンジがアフロになってる!!」

「……るせえ」



ということはあれか。
私はデンジになってるのか。
収まらない笑いで震えていると、オーバがあきれたような声でデンジに言った。



「デンジ、お前また変なメカ作ったのか?」

「オレじゃねえよアフロ」



















「「アフロはお前だ」」



オーバとはもって、二人で大爆笑する。
涙をぬぐってデンジを見ると、こめかみに青筋が浮き上がっていた。
ヤバい、ガチで怒ってる。



「それにしても、デンジじゃなきゃなんでこんな…」



オーバが人のほっぺをぽりぽりかくと、どこからか叫び声が聞こえてきた。



「リア充なんか爆発しろー!!」



とてつもない大音量で、エコーがかった女の声。
私は思わず耳をふさいだ。



「うるさっ!」

「うるさくない!
子守唄のような清らかな声よ!!」



逆ギレされた。



「あれ、あんたら三人で入れ代わったの」

「てめえ誰だよ」



不機嫌MAXのデンジが、姿の見えない声相手に凄んでいる。
…オーバの顔だからいまいち怖くないけど。



「ああ、二人のポッキーゲームを無理やり割って入ったのね」



たしかに、オーバと私の口を結ぶポッキーをデンジが割りこんで、真ん中にかみついてむりやり折った。

…オーバと私のポッキーゲーム、止めようとしたのかな。

うぬぼれて思わず顔が赤くなる。



「質問に答えろ
てめえは誰だ」

「だまらっしゃい!!
リア充は爆発すればいいんだ!!」

「…オレリア充じゃないんだけど」



オーバが涙目でずぅんとじめっとするオーラを放出させる。



「異議は認めません!
ポッキーゲームすること事態リア充なんだよ!!」

「あ、わかった
こいつ非リア充だ」

「!」

「ひがんでんのか、あ?」



私がニヤニヤしながら問いつめると、声は押し黙って。



「うわあああああんっ!!!」



絶叫してフェードアウトして消えていった。
数分たち、本当に声が消えたのだと確信する。



「…なんだったんだろね、今の」

「つかオレ達、どうやって戻んの」

「…知るかよ」



はあ、と三人でため息をついた。



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