◇◆◇◆◇◆



「…はあ」



ため息をついて席に座る。
私が学校に着いたとき、もうHRは終わっていて休み時間に入っていた。

…計画通り。

ニヤリと心の中で笑ってみて、クラスメートの視線を感じつつ、一息ついた。
クラス替えしてから日が浅いせいか話しかけてくる人はいない。
“あれ、こいつ朝いなかったな”、そのくらいにしか認識されていないだろう。
ノリのいい人なら“なあに遅刻してんだよ★”みたいに話しかけてくれるんだろうけど、あいにく私のクラスにそんな人はいないようで。
みんな完全にスルー。
確かに前のクラスでもよく話す友達なんてあんまりいなかったけど。
見事にその友達とも離れちゃったけども。
なにより、私にはなにか人を拒絶するオーラがまとわりついてるらしい。
でも、そんな私に話しかけてくる人がただ1人だけいる。



「なあに遅刻してんだよ」



弾んだ威勢のいい声が、私に話しかけてきた。
――真重崎 証。
家が隣りな私の幼なじみで、小学生の時から今までずっと同じクラスになったというミラクル。
その不良さながらな外見と反して、優しくて、心配性で、ちょっと血の気の多い証。
私の一番仲のいいやつ……だと思う。
ただ私がそう思っているだけかもしれない。

人なんて何を考えているかわからない。
表面と内面は必ずしもイコールではないんだ。
――怖い、人が。
心が見えないからこそ、怖い。

だけど、証は怖くない。
それは小さい時から一緒で、性格や接し方をよく知っているから。
これをしたら怒る、これはしても大丈夫、と境界線がわかっている。
信頼、とは言えないのかもしれないけど私にとって証は、気を許せて信じられる唯一の存在になっていた。



「なにかあったのかよ?」



心配してくれているのか、細く整えられた眉をぐっと寄せながら尋ねてくる。
金色の跳び跳ねた髪がまるで犬の耳のように揺れた。



「んー…、なんか変な人に会った」



変な人とはもちろん白哉のことで。
まあ、遅刻の原因はただ私が寝坊しただけなんだけど。



「服装とかしゃべり方がなんか江戸時代みたいで、あと光出したり、突然消えたり」

「おまっ、それストーカーじゃね!?」

「…へ?」

「だってコスプレして写真撮って隠れてんだろ!?」

「……………」



確かに。
今の私の説明じゃそう思うのも無理はないのかもしれない。
…あの人がストーカー。



「ぶっ!」

「な、なんだよ
いきなり笑いだして……」

「ううん、なんでもない
大丈夫だよ、ストーカーなんかじゃないと思う
ありがとね」

「そうか?
ならいいんだけどよ……」



なにか言いたげな証をよそに、休み時間終了を告げるチャイムが鳴り響いた。



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