「あぁ、行っちゃった」

「……………」

「残念、スか?」



いたずらっぽくニヤリと笑って帽子に手をかける浦原。
白哉はそれを冷たい目で見やってから、真冬が出ていったふすまを見つめた。



「にしても、あなたがアタシらのところを訪ねてくる日が来るとは夢にも思いませんでしたよ」

「…真冬をどこかで休める必要があった」

「それと、例の件ッスね」



浦原の付け足しに頷くこともせず、ただ目を伏せる白哉。
それを肯定と受け取ったのか、浦原は続けた。



「あなたのことを見た瞬間から、真冬さんの霊力が戻り始めた
…いや、この場合目覚め始めた、ですかね」

「このようなことがあるのか?」

「ええ、極希に
ただ真冬さんの場合は異質ですねぇ
霊力はともかく、まさか記憶まで」

「…研究者としての血が騒ぐ、か」

「まあ少しは」



ばつの悪そうに、だが飄々と頷く浦原を白哉は鋭い視線でにらみ、牽制の言葉を口にする。



「真冬に危害を加えてみろ
その時は―…」

「ハイハイ、わかってますって
血の気の多いところは変わってませんねぇ」



どこか遠いところを見つめながら呟く浦原。
しかし次には鋭い眼光をつばの影に光らせ、白哉に指先を突き立てた。



「で、白哉さん
追放中のアタシらの居場所をどうやって?」



白哉はすぐさまその手をしりぞけて、隣りに置いた刀に手を添える。



「四楓院夜一だ」

「…ああ、夜一さんが」



納得するように頷いて、白哉にはらわれた指先で畳を引っかく。
カリ、カリ、といった音が、静かな部屋に響いた。



「…白哉さん
追放中のアタシらに会って、規則はいいんですか
下手をしたらあなたまで……」

「霊法には追放者との密会を禁ずるものはない」

「…そうッスか」



それを聞いて安心したように微笑む。
そしていきなり立ち上がり、声を大にして、まるで景気づけでもするように言った。



「じゃ真冬さんのことはできうるかぎりのことはしましょう!
真冬さんのためにも、あなたのためにも、そして」



帽子のつばをぐい、とひっぱり、顔を影に隠しながら浦原は言った。



「アタシのためにも、ね」



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