目が覚めると、私は自分の部屋にいた。
ああ、まるで力尽きたゲームの主人公のようだ。
ぼやける頭で、昨日の出来事を思い浮かべてみる。

昨日はスリバチ山へ行った。
理由は、一言で言うと自殺。
スリバチ山の中にある水辺から、飛びおりようとしたんだ。
海へぴょーーんみたいな。
そしたら…なんだっけな。
なにかあったんだよな……。

考えこんでいると、その答えが自らやってきた。



「チユリちゃん!」



窓の外から声が聞こえた。
聞き覚えがある。
…ジムリーダーだ。
そうだ、昨日あの人に止められて、催眠術かけられたんだった。
私の部屋は一階。
窓を覗けば道がすぐそばにある。
カーテンを開けてガラス越しに外を見ると、マツバさんがいた。
キレイな笑顔で手を振ってくる。
…今一番会いたくない人。
いや、二番目かな。
私はカーテンをガッと閉めた。



「いい天気だよ
僕と出かけよう?」

「なんであなたと」



窓越しで、しかも小声だからマツバさんには聞こえない。
なんであの人は私をスリバチ山へ行かせなかったのだろう。
暗くて危険だから?
私はほっておいてほしかった。
あのまま死なせてくれれば、今こんな気分にならずにすんだのに。
すると、部屋の外で物音がした。
何かが落ちて割れる音。
それから次々と破壊音が続いた。



「……………………」



今、一番会いたくない人……。
しゃがみこんで耳をふさぐ。
何も聞きたくない、何もしたくない、何も見たくない。
傷つきたくない。
ふと目を開けると、ガーゼが見えた。
昨日ケガした場所に丁寧に手当てがしてある。



「これは……?」



マツバさんが、やってくれたの?
山で眠らされたあと、家へ運んでくれたのもたぶんマツバさんだ。
…運んでくれたのはともかく、手当てのお礼くらいは言わなきゃ。



「あの…」



カラ、と窓を開けて顔を出すと、さっきの笑顔ではなく、驚いたような表情のマツバさんがいた。
口ごもりながらも、お礼を言う。



「膝の手当て、ありがとうございました……」



沈黙。
…変なこと言った?
不安で泣きそうになったとき、マツバさんがニコッと笑った。



「いいよ、あれくらい
それよりどこか行こうよ」

「…ジムはいいんですか?」

「気分が悪いって休んできた」



えー……。
ジムリーダーがそんなんでいいの?
呆気にとられていると、マツバさんが急かしてきた。



「ほら、早く仕たくしてきて
待ってるから」

「…はい」



なぜうなずいてしまったかわからない。
たぶん、家にいたくなかったんだと思う。
わたわた身仕たくをしながら、私は理由を考えていた。



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