2人目に挑戦させられそうになったけど、私にはあんなバトルできなさそうだからやめておいた。



「ちょっとずつ慣れていけばいいよ」

「はい」



ロコンは相変わらずマツバさんが嫌いみたいで。
マツバさんが近づくと唸っていた。



「そういえばこのロコン、男の子だった」

「そうなんですか?」



おまえ男の子なのかーと撫でたくる。
するとマツバさんがロコンを取りあげた。



「ロコンの雄は珍しいんだ
ロコンやキュウコンは執念深いからね
嫌いな相手はとことん嫌うよ」



ほら、と暴れるロコンを見せてくる。
またケガしないかひやひやしていると、ロコンを顔の前に持ってきて目を合わせた。



「いいかいロコン
君のご主人様をしっかり守るんだよ」

「グルル……」

「あとチユリちゃんは僕のだから」



ポ、ポケモン相手に……。
でもそんな子供っぽいマツバさんがかわいく思えるのは、惚れた弱みだろうか。



「ジムリーダー、前ジムリーダーが呼んでますよー」

「わかった」



ロコンを地面に置き、ちょっと待ってて、と暗闇の中へ消えていく。
ぽつん、と残された私に、さっきのトレーナーが話しかけてきた。



「ジムリーダーに彼女ができるとは……」

「ははは……」



こんなときどう答えていいかわからず、笑っておいた。



「ジムリーダー、昨日まで上の空だったんだ
挑戦者には簡単に負けるし、いつもの様子からじゃ考えられない」

「負けちゃったの?」

「うん
でもなにか吹っ切れたように突然ジムから出てって、帰ってきたかと思えば元通り
元通りっつーか、めっちゃ機嫌良くてバトルも絶好調」



もしかしてそれって、私と付き合ってから?
顔が熱くなる。
それを見てトレーナーは、やっぱりかと呟いた。



「あんたか、原因は
今ジムリーダー呼ばれたの、たぶん説教だぜ」

「…マジで?」

「マジでマジで
でも俺としては今日みたいに楽しそうなジムリーダーの方がいいな」

「楽しそう……」

「ジムリーダーに女ができるの初めてだし、あの人いっつも薄幸そうな顔つきだったから
新鮮新鮮」



薄幸そう……。
それってどんな顔?
私は今のマツバさんしか知らないから、想像がつかない。
話しこんでいると、マツバさんが帰ってきた。
やべっ、とトレーナーが手を振って逃げる。



「…お説教?」

「ん?
うん、たるんでるって」

「………………」

「言っとくけど、チユリちゃんのせいなんかじゃないからね」



おでこを指で軽く弾かれた。



「1人でぐだぐだ悩んでた僕が悪いんだから、チユリちゃんが気にする必要はないよ」

「…はい」



そんなこと言われても、気にするものは気にする。
ぼーっとロコンを撫でてると、マツバさんがため息をついた。



「納得しないなら、力ずくで納得させるよ?」

「え?」



顔を上げると、唇になにかが触れた。
マツバさんの顔がすぐ近くに見える。
唇が離れてマツバさんがニッと笑った。



「納得した?」

「〜〜〜っ」

「あ、してない?
じゃ……」

「しました!」



マツバさんの口元を手で押さえた。
残念そうに頬をかく。
…なんだろう。
どんどんマツバさんが強引で大胆になっていく気がする……!
触れた唇は、手と同じでひんやりしていた。
思い出して顔を真っ赤にした私を、マツバさんは優しく撫でた。



back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -