来るのは二度目のジム。
はっきり言って、そんないい思いはしない。
こないだあんなことがあったし、ゴーストタイプのジムだし。
少し怖い。
それを感じとったのか(それとも千里眼で見たのか)、大丈夫、と笑いかけてくれた。



「ジム、挑戦してみる?」

「へ?」

「野生のポケモンに襲われたときのために、ロコンを強くしてもらわないと困る」

「私、バトルしたことないですよ?」

「何事も挑戦だよ
ついててあげるから、やってみよう」



ぐいぐい肩を押されて中に入る。
中は真っ暗で何も見えない。
肩にあったマツバさんの手が、消えた。



「え?
マツバさん?」



返事がない。
涙目になりながら、ロコンを抱きしめた。
そんな私と違ってロコンは気合いたっぷり。
地面へ置くと、口から火を出して暗闇を照らしてくれた。
火はまるで人魂のようにふよふよ浮かんでいる。



「ロコン、なにそれ?」

「鬼火だね」

「わっ!」



いきなりマツバさんが現れて、思わず声をあげた。
そんな私の頭をくしゃくしゃ撫でる。



「ごめん
ちょっと驚かせたくて」

「………………」



涙目でマツバさんを見ると、もっと頭をぐしゃぐしゃされた。



「ほら、まず1人目」



マツバさんが指さした先には、袴姿の見るかぎりお若いトレーナーさん。
マツバさんを見て驚いた顔をしている。



「ジムリーダー!
なにしてんですか!」

「気にしないで
それより、この子挑戦者」

「よ、よろしくお願いします」



ペコーと頭を下げると、ため息をついてわかりました、と言われた。



「チユリちゃん
最初は僕が指示だすから、チユリちゃんはそれをロコンに言って」

「はい…」



緊張がっちがちの私の肩を、マツバさんがぽん、と叩いた。



「マツバさん……」

「なに?」

「なんか後ろの方で気配がするんですけど……」

「なにかいるのかもね」

「っ!」

「ははっ、ごめんね
こうしてれば大丈夫かい?」



そう言って後ろから抱きついてきた。
たしかに、それなら大丈夫だけど今度は別の意味でヤバい。
心臓が爆発しそう。
そんな私達を、相手のトレーナーさんは半目で見据えていた。



「イチャイチャしたいなら俺の前じゃなくて2人だけでやってくださいよ」

「イチャイチャ……っ
マツバさん、大丈夫です
離れてください」

「嫌」

「〜〜〜っ」

「はいはい、じゃ始めますよ
準備はいいですか?」



ボールを投げる。
赤い光と共に、ゴースが現れた。
ロコンも前へ駆ける。



「ロコン、がんばってね」

「コン!」



嬉しそうにこちらを振り向いた。



「いや、前見て前……」

「じゃあいくよ
電光石火」



言われた通りに復唱する。
すると相手トレーナーが声をあげた。



「ノーマルタイプの技は効かねーよ!」



明らかに嘲笑っている。
え、そうなの?
ゴースの目の前にロコンが来たとき、またマツバさんが指示を出した。



「鬼火」



ロコンか放った鬼火がもろにゴースに当たる。
鬼火を放った後、ロコンはゴースをすり抜けた。



「すり抜けた!?」

「ノーマルタイプの技はゴーストタイプに効かないからね
攻撃してもああやってすり抜けるんだ」

「へえ……」

「ああっ!
ジムリーダーが指示出してたんですか!?
ずりー!」

「この子は初心者だからいいの」



こういうところを見ると、やっぱりマツバさんはジムリーダーだと実感する。
バトルが強くて、トレーナーから慕われてて。
すごいなあ……。



「ゴース!
舌でなめる!」

「よけろ」



でもロコンは避けきれずに攻撃を受けてしまった。
それでもロコンはそれほどダメージを受けていないみたい。
それにしても、なんて卑猥な攻撃だろう。
後ろから伸びるマツバさんの手が、ゴースを指さした。



「ゴースを見てごらん
さっきの鬼火で火傷状態になってる
火傷状態になると体力が徐々に減っていって、攻撃力が落ちるんだ」

「そうなんですか」

「体力の低いロコンには有利だよ
あとゴースのあの技は当たると麻痺状態になってしまうことがあるから、気をつけて」



見たところロコンはまだ余裕がありそう。
それに比べて相手のゴースはフラフラしている。
火傷で体力が減ってきているのか。



「ゴース、催眠術!」

「電光石火で避けろ」



ひら、と攻撃を避けるロコン。



「ひのこ!」



まともに当たったゴースは倒れた。
ロコンが嬉しそうに駆けよってくる。



「きゃー!
ロコンおめでとー!
お疲れ様!」

「ジムリーダー相手はずりー……」

「あ…、ごめんなさい……」

「バトルの感じ、わかった?」

「はい
ありがとうございます!」



ロコンを撫でる私を、マツバさんはきゅっと抱きしめてきた。
つい驚いて、肘がマツバさんのお腹に入ってしまった。



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