「で、チユリ
そのロコンは君のか?」

「はい
捕まえてはないんてすけど」

「そうなのか?
ボールがないのか?
なら私がやろう」



ほら、とボールを手渡された。
ボールをじっと見つめる。
ロコンを私が縛っていいのだろうか。
私は良くても、ロコンは苦労するだろう。
だって私はこんな性格だし、遠くないいつか、ロコンの前から消える。
すると、ミナキ君がロコンを撫で始めた。



「ロコンはな
生まれたときはしっぽが1本で、しかも白いんだ
ちょうどこんな風に」

「そうなんですか?」

「ああ
生まれたロコンは親からの愛情を受けて徐々にしっぽが別れて、色を変えていく
このロコンは親から愛情を受けられなかったんだな」

「………………」



まるで、今の私だ。
このロコンはそんな悲しい過去があったんだ。



「だからチユリがこいつの親の代わりに愛情を注いでやれば、こいつも幸せだと思うのだが」

「…すごいね、ミナキ君
ポケモンに詳しくて」

「スイクンを追って旅をしてれば、ポケモンにも詳しくなるさ」

「旅かあ
いいな、楽しそう
誰にも邪魔されずに、好きなように好きな場所へ行けるの」

「私はスイクン目当てだがな」

「そっか」



そう言って笑いあう。
…ロコンは私と似てる。
悲しい思いを今までしてきたんだろう。
私でそれが埋まるのかわからないけど、ロコンがよかったらせいいっぱい愛情を注いであげれたら。
…私が死ぬその時まで。

ボールをロコンの顔の前に持っていった。



「ロコン、入りたい?
嫌だったら嫌って言ってね」

「コン!」



嬉しそうに足へすりよってきた。
これどうするの?とミナキ君に訊くと、ロコンに向かって投げろとのこと。
なぜかミナキ君は後ろを見てによによしている。
疑問に思いながら、軽く、軽ーく投げようとすると、ボールが手から消えた。



「あれ、ボール…?」



手のひらを凝視してもボールはない。
ミナキ君が口とお腹を押さえて笑っている。
どっか飛んでったのかと思って後ろを振り返った。
そこには……。



「………あ」



マツバさんがいた。
その表情はなぜか怒りで満ちている。
その手にはモンスターボールが握られていた。
マツバさんに取られたんだ。



「………………」

「はい」



手の中のモンスターボールを見つめていると、別のものを渡された。
たぶん、マツバさんのもの。



「いりません」



ロコンを抱きあげて逃げようとした。
でも肩をつかまれて妨害される。
すると、ロコンが勝手に火を吹いた。



「あつっ」



ミナキ君大爆笑。
驚いてロコンを見ると、やったったぞこのやろう、という顔をしている。
…なにか恨みでもあるのか。
マツバさんの手は赤く火傷していて、痛そうだ。



「……………」



ああ、ほっとけばいいのに。
なのに私はどうしてもほっとけなくて、傷が悪化して跡が残らないか心配しつつ、私はバックから救急セットを取り出した。



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