「君に惚れられるならカメムシと結婚するよ」

臭いじゃんカメムシ。ヒロトくんは私が嫌いらしくいつもこんなことを言ってくる。まぁなんてひどいんだろう。私のメンタルは紙なんだ。だからこそ今保健室登校だというのに
苦笑をもらせば寒気がするからやめろと言われてしまった。
そんなに私が嫌いならなんで私に話しかけてくるんだ。ああそうか嫌いだから見下したいのね。

『そう』

それだけ返して手元のハルヒを読む。私は今キョンの気分だ。キョン、同情するよ。ヒロトくんの言葉なんか聞こえない。聞いてしまったら今まで我慢してきた何かがくずれるから。ちょっと待っててねと言って出て行ってしまった保健の先生早くもどってきて。なんでこうもタイミングが悪いんだろう。

「ねえ君風邪ひいたって本当?バカは風邪ひかないって嘘だったんだね。あれでももうすぐ夏だしああそっか夏風邪はバカがひくってことか納得」

一人で納得してて。私はなんにも聞こえない。けほ、と咳が口から漏れる。

「うわっ近寄らないでくれる?君の唾液がかかっておまけに君から風邪をうつされるなんて悪夢でしかないよ」

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
私は喘息もちなんだ。季節の変わり目に風邪をひく。気温の変化に体がついていかないんだ。

「どうせ仮病なんでしょ?」

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

五月蝿いな

『五月蝿いな』

ああ。消えたい
今この瞬間から消えてしまいたい。だってこの人と顔を合わせたく無いんだから。嫌だ。
目のあたりが熱いし頭もぼーっとする。しかもガンガンする。なんだこれいじめか。月曜早々こんなんだなんて悪夢でしかない。うー・・・

本を閉じて肘掛に頭を預ける。だるい、くらくらする。体温計を手にとってわきに突っ込んだ。ヒロトくんはなぜかかたまっている。というかいたんだ、忘れてた

『さんじゅうななどはちぶ』

げっ・・・まだあがるであろう。こんなに熱があったのか。ふらふらする頭を抑えながら足に力を入れて立ち上がる。

「っちょ、」
『じゃあさ』

ああ、頭がんがんする。これきっと歩いて帰れないなぁ

『君、カメムシと結婚してね』

安心してよ、1週間は来ないから



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