応援席で本を読んでいる紫円は、こちらにちらりと目を向けてまた本に目を戻した。
なんだか今日は雷門中の皆さんがはるばる僕をスカウトしにやってきたわけだ。お手並拝見、とのことでサッカー中なわけなのだが、今日は紫円はサッカーをしようとしない。どうしてだろう


『・・・さて』


紫円が本を読み終わったようで立ち上がって、マフラーを巻いた。
くああと欠伸をしながらちょいちょいと手をふって僕に合図。ああ、やるのか






みんなが固まった。それはそうだろう
紫円がシュートを一瞬で決めたからだ。ゴールは氷付け。しかも菊の彫刻が咲いている
相変わらずぼーっとしながら紫円は僕の方を向いてこくりと頷いた。

『わたし』

うん

『サッカー』

うん

『やってみたい』

紫円が静かに笑った気がした。ねえ、もっと笑ってよ。それだけで僕の世界が色づいて行く気がするんだ、だから

『よろしく、吹雪君』

紫円が僕の名前を呼んだのは始めてだったと思う
相変わらずどこを見つめているかわからない深い色の瞳は、僕をうつしていた

『今の業、本に出てた。”零地点突破”』

やっぱり彼女はすごいなぁと思った。




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なんだこれ。零地点突破は某復活漫画から。きっと小説読んでたんだよ



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