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「ほら、何時だと思ってるんだい。いい加減に起きないか。」
物凄い力で被っていた布団を剥ぎ取り、ぷりぷりと怒っているこの愛おしい刀。歌仙兼定。毎度毎度俺を起こしに来てくれる世話焼き。
「…おはよ、歌仙。」
「お早う。もう少しで朝餉出来るよ。」
朝が弱く、寝起きはボーっとしてしまう俺にとって歌仙はなくてはならない存在だった。
わざわざ俺の近くに膝をついて俺の様子を伺う。
自然と伸びた手は既に歌仙の頭へ行き、くしゃりと撫でていた。身だしなみを整えただろうに、全く俺は何をしてるんだ。怒られるに決まってる。
「歌仙…」
それでもやめないのは歌仙が嫌がる素振りを見せないから。
「は、やく目を覚ましてくれ。」
「ん。もう覚めた。」
寝ぼけていると思われてるのかな。だから嫌がらないのかな。
「そうか… 」
それでも何も言うことなく目を閉じて静かにじっとしていた。
可愛い。頭撫でられるの好きなんだろうなぁ。
「…堪能したかい?」
「うん、ありがとう。」
ふわりと歌仙の背後で桜が舞った。慌てて消す素振りを見せるけど。
「歌仙。」
「な、なんだい。」
「かせん…かーせーんー。」
「だからなんっ…」
「歌仙!」
「っわぁ?!」
腕を引っ張ってそのまま一緒に布団に戻った。油断してたのかすっぽりと腕の中に収まり、俺の上に倒れた。歌仙が動揺しているのがわかる。
歌仙いい匂いする。落ち着く。
「今日も頑張れそう。」
ふ、と力を抜いた歌仙を思う存分抱きしめた。
すぐ後に燭台切の俺らを呼ぶ声が聞こえてきて、我に返った歌仙が慌てて退けようとして俺の肩を力強く押した。多分肩の骨粉々になった。
そんな歌仙も可愛いな、なんて。
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