小説刀剣乱舞 | ナノ

1


「ほら、何時だと思ってるんだい。いい加減に起きないか。」

物凄い力で被っていた布団を剥ぎ取り、ぷりぷりと怒っているこの愛おしい刀。歌仙兼定。毎度毎度俺を起こしに来てくれる世話焼き。

「…おはよ、歌仙。」

「お早う。もう少しで朝餉出来るよ。」

朝が弱く、寝起きはボーっとしてしまう俺にとって歌仙はなくてはならない存在だった。

わざわざ俺の近くに膝をついて俺の様子を伺う。

自然と伸びた手は既に歌仙の頭へ行き、くしゃりと撫でていた。身だしなみを整えただろうに、全く俺は何をしてるんだ。怒られるに決まってる。

「歌仙…」

それでもやめないのは歌仙が嫌がる素振りを見せないから。

「は、やく目を覚ましてくれ。」

「ん。もう覚めた。」

寝ぼけていると思われてるのかな。だから嫌がらないのかな。

「そうか… 」

それでも何も言うことなく目を閉じて静かにじっとしていた。

可愛い。頭撫でられるの好きなんだろうなぁ。

「…堪能したかい?」

「うん、ありがとう。」

ふわりと歌仙の背後で桜が舞った。慌てて消す素振りを見せるけど。

「歌仙。」

「な、なんだい。」

「かせん…かーせーんー。」

「だからなんっ…」


「歌仙!」

「っわぁ?!」

腕を引っ張ってそのまま一緒に布団に戻った。油断してたのかすっぽりと腕の中に収まり、俺の上に倒れた。歌仙が動揺しているのがわかる。

歌仙いい匂いする。落ち着く。

「今日も頑張れそう。」

ふ、と力を抜いた歌仙を思う存分抱きしめた。

すぐ後に燭台切の俺らを呼ぶ声が聞こえてきて、我に返った歌仙が慌てて退けようとして俺の肩を力強く押した。多分肩の骨粉々になった。

そんな歌仙も可愛いな、なんて。

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