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僕の初期刀はとても眩しかった。表現とかじゃなく、マジで。具現化したときにテッカーってピカピカな衣装身に纏ってた。びっくりした。
ただでさえ戦に行く時に敵にすぐバレるような豪華な戦闘服着てるっていうのに、内番服もキンキラキンだと目が疲れる。
僕が必死で畑を耕している中、ここにいる唯一の刀剣男士、蜂須賀くんは優雅に茶を飲んでいた。
「ねー、手伝ってよー。」
「服が汚れてしまうだろう。」
だったら汚れていい服に着替えろや。
審神者業初日、霊力なくて二振り目鍛刀出来なかった僕の気持ちを考えて。とりあえずたくさん寝て回復はさせたけど、こんな広い畑を一人で整えてたら体力もなくなって鍛刀出来ないよ。
「んじゃあご飯の用意して。」
「昨晩人間の身体を得た俺がそんなこと出来るわけがない。」
うわーん、そうだった。昨日やっと服の着方とかトイレとかの基本的なことしか教えてなかった。
「もー、先にご飯作るから待っててね。」
軍手を脱いでタオルで汗を拭く。審神者ってのがこんなに忙しいとはなぁ。
僕の日課、それは褒めること。良好な関係を築く第一歩だ。
今日も箸の持ち方覚えるの早いね、って褒めると数秒目をパチパチさせてから当たり前だなんて言う。それでも頬は先程よりも緩んでいて可愛いなと思った。
広すぎる居間に僕と初期刀だけがぽつんと真ん中で食事をとる。寂しい。一刻も早く仲間を増やしてあげたい。
今日は畑仕事再開する前に鍛刀しよう。
「残さず食べてね。」
「どこ行くんだい。」
「お仕事。」
腰を上げた僕に手を休ませ首を傾げた。蜂須賀くんに笑いかけると小さく頷いて箸を動かした。
「蜂須賀くんっ!」
蜂須賀くんがいるであろう縁側に走る。驚いて目をぱちくりさせている蜂須賀くんの肩を掴んだ。
「落ち着きないね。」
「着いてきて!」
腕をグイグイ引っ張って鍛刀部屋に向かう。蜂須賀くんは部屋の中にある二つの影に眉を顰めた。
「じゃーん!仲間が二振り増えたよー!」
くるっと振り返り両手を広げる。
「五虎退くんと、長谷部くん。」
足の周りを駆け回る白い虎を抱き上げ蜂須賀くんに紹介した。二振りも鍛刀出来るとは思わなくて、内心凄く嬉しい。
「…よろしく。」
舞い上がりすぎて、ぎこちない笑みをする蜂須賀くんには気が付かなかった。
「主、それは俺がやります。」
それから数日経ったが、長谷部くんの働きっぷりには毎日感動していた。今回もありがとうと言って急須を渡す。いつも何かしようとしたらすぐに代わる。すごいな、お仕事マンだ。
「無理はしないでね。」
心底嬉しそうに笑って無理はしておりません、と言った。うん、すごい。
「うわあぁ!と、虎さん!」
厨房に一匹の虎が駆けてきた。なぜか僕にタックルしてきたからあごを撫でる。五虎退くんも慌てて入ってきた。
「毛が舞うだろう。」
「ご、ごめんなさい。」
長谷部くんの注意に泣きそうな顔をする。そんなに怒らないで、という意味も込めて皆の頭を撫でた。
「やっとじゃがいもの芽が出たよ、主。」
タオルを肩にかけて爽やかに笑う蜂須賀くんが僕の近くに寄る。
「そっか。楽しみだね。」
頬についた泥を指で拭ってあげた。二振りが来てから蜂須賀くんも働くようになったんだ。関心関心。
俺も撫でろと言わんばかりに頭を押し付ける。ぽんぽんと撫でると桜が舞ったように見えた。
「はっ、顔が緩んでみっともないぞ。」
「…はぁ?」
和やかな幸せムードが一転、張り詰めた空気に変わった。
うわ、またか。
挑発したように嘲笑う長谷部くんと気分が急降下して殺意丸出しの蜂須賀くん。震えて僕にしがみつく五虎退くん。
溜息をついた。今日で何回目だよ。顔を合わせる度にこうやって喧嘩するのはやめていただきたい。実はお互い好きでしょ。知ってる。
「こんなに汚して、洗濯するのは誰だと思っている。」
「君こそ畑仕事もせず主に引っ付いているのはどうかと思うね。」
「なんだと…」
「はいはーい、ストップー。」
間に入って二振りの間を開ける。本当に世話のかかる奴ら。
「絶対に負けん。」
「負ける気は無いさ。」
何の話。
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