◎恵美ちゃんの殺人クラブ監察日記より百合エンド



今回のターゲットである「倉田恵美」は嘘で生きているような女だった。七不思議の集会までの一週間、こっそりと観察させてもらったけど、この女がクラスの人気者なのか甚だ不思議。福沢さんも殺してやりたいくらい嫌いだけど、この女も同等だ。こんな人、生きていても仕方ないわよね。だって私を裏切るんだもの。どんなにやめてと言っても、口うるさく喚く。だからカッターを取り出した。殺すために。だけれど。


「お名前は?」

「ひはひははへひ」


突然豹変した彼女。呆気に取られた隙にカッターをとられ、舌をとられそうになった。けれどその瞬間の彼女の瞳に、思わず魅了されて。


「んう・・・・・・・っ?!」


気付けば私は彼女の唇に私のそれを重ねていた。そして、そのまま彼女をひきつれ一緒に帰った。そんな興奮するようなことがあったからか、その日は全然眠れなかった。あの悪魔のような瞳、口角の歪み方、どれをとっても素敵だった。そんなことを鮮明に思い出していたらいつの間にか夜が明けていた。




「岩下、ちょっと」


次の日学校へ行って、自分の席について昨日の出来事を思い出していると、名前をよばれた。声をかけられた方を見れば、新堂君が後ろのドアにもたれ掛かる様にして立っていた。今、登校してきた生徒が少ないとはいっても、教室内の誰とも交流の少ない私が新堂君と一緒に見られるのは嫌だった。それを相手は知ってるのに、どうして話しかけてくるのかしら。
半ば面倒くさいという気持ちもひきつれて廊下に出ると、私の制服の袖を掴みさっさと歩き出す彼。一応、他人の視線には配慮してくれるらしい。

たどり着いた場所は今はあまり使われていない、東階段だった。


「ここまで来て言いたいことって何かしら」

「お前、昨日殺されてたかもしれないんだぞ」

「・・それが?殺される覚悟はちゃんとしてるから大丈夫よ」


殺人クラブにいる以上、もしかしたら誰かが見てるかもしれない。もしかしたら誰かが私を殺そうとしているかもしれない。そう思って当たり前。だから私はいつでも殺される覚悟はしてある。裏切られる覚悟はしてないけれど。


「・・・・お前、アイツがいいのかよ」

「アイツ?・・ああ、倉田さんのことね」

「一緒にいたら、またアイツにやられるかもしれないぞ」

「別に。裏切られたらたとえ動けなくなっても倉田さんを殺すから大丈夫よ」


新堂君に心配されるなんて思わなかった。私、あなたに心配されるほどおちぶれてないの。そう言ったら、新堂君は頭を掻いて言葉を選ぶように呟いた。


「・・そうじゃなくて、」

「あら、倉田さんだわ」


外を見ていたら、校門を潜り抜けたばかりの倉田さんが見えた。大変、迎えにいかなきゃね。


「話はそれだけでしょう?私、もう行くわね」


新堂君を残して、私は校門へと歩を進めた。


END.
絶対新堂→岩下だと思う
恵美ちゃ んの殺人ク ラブ観 察日記より
(100317)