先ほどから手は突起の周りを撫でるだけで、それ以外は何もしてこない。その行為に何のメリットがあるのだろう。少なくとも俺にはない。きっと気難しそうな顔をしているシズちゃんにも無いと思う。躾と呼ぶにはあまりにも優しくて、愛撫と呼ぶにはいささか怪しい。


「………ねえシズちゃん」

「あ?何だよ」

「これさ、意味ないと思うんだけど」


何が言いたいとでも言いたそうな顔に、俺はシズちゃんの逆鱗に触れることを予め想定しながら自分の意見を述べる。


「つまりね、この胸だけ触るって行為に何の意味も感じられないんだ。俺の感覚がおかしくなければもうかれこれ10分は触ってるよ。もし君が愛撫という明確な意思を持って触っているのなら、悪いけれど何も感じないし勃たない。強いて言うなら肌が露出していて寒いとは思うけど――だからさ。もうやめてくれないかな」

「………お前は躾を愛撫と思っているのか」

「……これ、躾?」

「当たり前だろ。…ああでも、お前は愛撫だと思ったんだな――なら、しっかりやってやるよ」


シズちゃんは獲物を見つけた肉食動物のような笑みを浮かべた。それを見て一瞬にして後悔の念が押し寄せてきた。最悪だ。地雷を踏んでしまったらしい。彼は躾のつもりで俺の身体を触っていたらしい。けれどこんなに優しくて、誰が躾とわかるだろうか。


「あっ…!」


考えていたからか、シズちゃんの指の動きに気づかなかった。
シズちゃんは、今度は明確な意思を持って、胸の突起の片方をいじり始めた。