・静雄がナチュラルに臨也宅の合鍵持ってます




「私、ダイエット始めたの。だからフラフープ置いてっていいかしら」


それが人にものを頼る言い方か、と聞きたくなるくらいの上から目線。ただいま波江は通販で買ったらしいフラフープを組み立て中。俺が何か言う前に事に運ぶあたりが波江らしかった。

組み立て終えたフラフープは持つと重そうだ。青と赤が交互のそれを振り回して痩せようというのならそれはいい発想だ。波江はそれを腰にあて、くるんくるん回し出す。身軽な動きだ。そう、身軽。波江は今のままでも十分細いのに、何故いきなりダイエットに走ったんだろうか。疑問に思うが深く聞くつもりはない。あの弟くんが関係してることはもうわかりきってることだ。




長い針が12を、短い針が8を示すと同時に時計はぽろろん、と奇妙な音を奏でた。くるんくるん回っていた波江が急にピタリと止まる。当然フラフープは下降し最終的には床に落ちる。落ちたそれを棚の横に立て掛けた波江は、さっさと鞄を手に取り玄関へと歩いていった。


「じゃあ、私行くわ」

「うん。今日はお疲れさま。夜道には気をつけなよ」

「貴方こそ」


ふふ、と冷たい微笑を残して波江は帰った。これでフラフープが肉に当たる生々しい音は消えた。画面に視線を戻した。数字が羅列されたそれを見直す。特に変なところは見当たらないので上書き登録。よしこれでやるべきことは終えた。


「んー……」


事務をしていたので身体が痛い。固くなった身体をほぐすために手を組んで上に上げるがまだ足りない。そんなとき、視界の端に映った青と赤。それはまるで、俺に回して回してと言ってるようで。


「よいしょ、と」


フラフープを腰にあて、波江がやっていたように回してみる。と、くるんくるん回りだすそいつ。重そうなそいつは回すと案外軽かった。意外、それと少し楽しいかも。

気づけば15分が経過していた。そろそろ休憩しよう。いい感じに疲れて、身体はポカポカしてる。閉じていた瞳を開けると、15分前にはいなかったはずの人物がいた。


「あれ――シズちゃん?」

「臨也……お前……何してんだ?」


コンビニのついでに寄ったのだろうか。シズちゃんは右手にコンビニの袋を提げて、呆然とした顔でこちらを凝視している。何をしているのかと聞かれればフラフープをしていたとしか答えようがないけど、フラフープをこの歳でやるのはおかしいことだろうか。


「見ての通りフラフープ回してたけど………?」

「よし、ベッドに行こう」

「…は!?」

「?」


何がおかしいんだ?という顔で見つめられる。一瞬俺が間違ったのか、と思ったがそんなことはないだろう。


「何で、ベッド……?」

「そんなの決まってるだろ」

「ああ、うん。だよね。シズちゃんはそうだもんね。…いやいやそうじゃなくて!どうしてin the bed?」

「お前の腰がエロイから」


当たり前だろ、とシズちゃんは朗らかな顔で言った。
ああもう、誰かこの馬鹿を止めてくれ!



END.
シズちゃんがHENTAIで頭の弱いこでごめんなさい。ずっと前から書きたかったネタが書けて満足です〜