わざわざペットのことを愛玩動物とか言っちゃうシズちゃんは、俺から見れば本当に頭がおかしくなってしまったとしか思えない。そもそも愛玩動物とは身近においてかわいがることを目的に飼う動物のことだ。シズちゃんの真剣な目と初めてペットを飼ったときのようなあの嬉しそうな顔は、確かに俺を愛でようとしているように見える。ここは大人しくしていたほうがいいのかもしれない。


「わかった。君のペットになろう。その代わり暴力振るうのはやめてよね」

「……そうだな、じゃあ暴力は使わない躾をする」

「―しつ、け?」

「ああ。善は急げだ…ほら臨也、」


シズちゃんにしては珍しいくらい優しい力で、俺は床に押し倒された。ちょうど頭は枕の上に落ちたのであまり痛みはなかった。そんなことより危険なのは今の状況。嫌な予感しかさせてくれないこの体勢。すぐさま起きようとしたが、シズちゃんが上に覆いかぶさってきたのであえなく失敗した。どうしよう。これはまずい。もしかして、いやもしかしなくても俺はシズちゃんに、


「掘られる?俺」

「違う。これは躾だ」


そうか躾なのか。なんて納得できるはずがない。シズちゃんは俺のコートとお気に入りの無地のVネックを一気に破く。合計5万は軽くそれらが一気に消えるのは見ていて不愉快だった。


「ねえシズちゃん、それ弁償してくれんの?」

「しないしする必要がない」

「必要がないって…俺に上半裸でいろって?冗談じゃない、ペットが風邪引いて困るのはシズちゃんのほうじゃないの?」

「そんときは俺が面倒見ればいい話だろ」


さすがの俺も言葉を失った。シズちゃんがここまでおかしくなってるとは思ってもみなかった。ちょっとシズちゃんにいい想いをさせてあげてから脱走しようと考えていた。けど服がないのではどうしようもないし、脱走できたとしてもここまで狂っているのであればそれこそ地の果てまでも追いかけてきそうだ。


「っ……」


シズちゃんの手が頬からその下へとゆっくりと這う。胸に到達したそれは何が楽しいのかそこばかりを執拗に撫で回す。弧を描くように、軽く、あるいは明確な意思を持って触れる。女にそれをやれば悦ぶだろうがあいにく俺は男なので全く何も感じない。強いて言えば、気持ち悪いとは思った。