首に鬱血の痕がみえる。まだ4月だから蚊に刺されたということはないだろう。つまりはこれは誰かにやられた、というわけだ。


「誰にやられた」

「あははっ。シズちゃんには関係ないじゃん」

「いいから言え」


やれやれ、とノミ蟲は首を振った。
その仕草1つに、心臓の鼓動が少し早くなる。ああ、まただ。また奴のせいで、ペースが乱れた。

数ヵ月前からノミ蟲限定で起こる異変。
原因は解らないが、残念なことに俺はノミ蟲を意識し始めてしまった。


「お得意様に、ちょっとサービスさせてあげただけ」

「…どんな風にだ」

「うわ。シズちゃんそっち系の話し大丈夫なんだー」

「茶化すな。いいから言え」

「だから、少しだけ身体を触らせたの」


シズちゃん見たい?
臨也は誘うように囁いた。服の首の部分を手で少し下げる。見えた肌色には、先程より多くの赤が見え隠れしている。


「……お前、それでいいのかよ」

「うん。俺は快楽至上主義者だし」


臨也はそう言って俺に背中を向けた。


「じゃあね、シズちゃん。次の仕事の準備しなくちゃいけないからさ。…あぁ、そうだ。もしシズちゃんが俺を買う気があるんだったらさ、いつでも事務所においで」

「・・・・・・・・行くわけねえだろ」

「・・ふうん?じゃあそういうことにしておいてあげる」


やってしまった。俺の変な沈黙に、勘のいいあいつが気づかないはずがない。
臨也は嘲笑を纏って暗い路地裏の奥に隠れてしまった。



「くそ…」


嫌いだ。
好きでもない男にさえ身体を差し出すアイツも。
素直に引き留められない俺も。


END.
イザビッチ難しいです。