世の中は綺麗ごとじゃあ生きていけないと思う。現に今、とか。 「・・・帝人くん、どうして俺はこんなことになってるの?」 「そうですね、僕が臨也さんに欲情してしまったからだと思います」 臨也さんのいう『こんなこと』。それは俺が臨也さんに薬を盛って、押し倒している状況。 まさか僕が差し出した飲み物を何の躊躇いもなく飲んでもらえるとは思っていなかったから、計画通りすぎて逆に予想外だ。貴方に無害だと思われていたという事実。それは少なからず僕の自信を喪失させる。 「・・ショックだなあ」 「奇遇ですね、僕もショックです」 「あはは。キミと俺のショックは大きさが違うと思うんだけどね」 「そうでもないですよ」 今にも同性に掘られそうだというショックと、好きな人になんとも思われていなかったというショック。そのどちらがショックか。決められない程度には、大きさは同じということ。 「それにしても帝人くんは俺を好きだったんだー」 「はい。それはもうこんなことしちゃうくらいには」 「うーん嬉しくない愛だなあ」 「でも貴方には僕の愛を受け入れてもらいます」 「絶対?」 何を今更。そんなこと決まってる。絶対だ。 矢霧くんや張間さんの気持ちがちょっとだけわかった気が、した。 END. |