・静雄編



「静雄って三大欲求なさそうだよね」

「・・・・・・は?」


セルティに用事があったのでマンションへ向かうと、残念ながらセルティはお仕事中だ、と同居人の新羅に言われた。冒頭の台詞は退散しようとドアに向かうと同時に言われた一言。


「・・・・いきなり何だよ」

「いや、結構前から思ってたこと。静雄も臨也も三大欲求なさそうだなあ、って」

「三大欲求って何だ?」

「え?知らないの?」


頷くと、新羅は不思議そうな目で見てきた。なんか腹立つ。


「人間の三大欲求だよ、一般には食欲・性欲・睡眠欲って言われてる」

「で、それが俺とノミ蟲にはないと?」

「うん。少なくとも性欲と食欲はない気がする。で、実際どうなの?性欲あるの?」

「・・・・まあ、一応」

「水着姿のセルティ見て興奮する?」


どうだろう。水着姿のセルティを見て興奮するのだろうか、俺は。こういう場合は変態っぽいが、想像してみるに限る。

都会とは違う新鮮な空気。夕日を背景に1つの影がぽつんとある。影はやや高い身長で、黒の水着が似合う。
綺艶やかな髪が風に舞う。影はこっちを振り向く。振り向きざま、影は綺麗に微笑んで俺を呼ぶ、「シズちゃん」と。

・・・・シズ、ちゃん?
その瞬間影が一気に彩りを覚える。艶かしい肌色。さらさらの黒髪。それから少し赤く染まった頬を恥ずかしそうにしながらはにかむ、臨也。


「・・・・・・・・・・」

「え、ちょ、嘘っ!?」

「何?」

「静雄、何でそんなに顔赤いの!?惚れたの!?ねえねえ惚れちゃったの!!?」


惚れた。誰に。誰が。
俺が、臨也に?


「ば・・っなわけねえだろ馬鹿新羅!」


加減をしつつげんこつすると、喚いていた新羅はやっと静かになった。
全く、今のは嘘に決まってる。ああそうだ。俺はノミ蟲が大嫌いだ。


「・・・・ふう、」


気持ちが落ち着いた。さっきからもう20分は経っていた。まだセルティは帰って来ない。また後で来よう。

廊下で伸びている新羅を尻目に、俺はその場からさっさと退散した。


END.
すごく意味不明でごめんなさい。言いたかったのは新羅の三大欲求なさそうだよね、のとこ。