ピリオド

  • since 12/06/19
 サンダルフォンが、ルシフェルのことを特別に思っているなんて、彼を知る誰もが気付いていることで、そして、ルシフェルがサンダルフォンを特別に扱っていることも、見守っている、誰もが気付いていた。だから、とっとと、くっついてしまえばいいのにと、強硬手段を模索する一部過激派を抑えながら特異点はやきもきしながら、見守っていた。我ながらお節介だなと思いながら、二人の休みを一緒にしたりだとか、討伐依頼のメンバーには二人セットにしたりだとか、どうにか二人を一緒にしてしまう。見守るとはいっても、このくらいはさせてほしい。でなければ自分が生きているうちに、あの二人はきっとくっつかない。特異点の思惑に気付いたサンダルフォンはじとりと睨むくせに、そのくせ、ルシフェルに声を掛けられるとそんな形を潜めるのだ。



「何を言ってるんだ」
 ひどく、不快であることが隠し切れていない口調に、特異点は目を丸くして、口をつぐんで、サンダルフォンを凝視してしまう。照れ隠しでも、虚を衝かれた風でもない。心底、気持ち悪いというように、サンダルフォンは吐き捨てた。
「恋仲だなんて、なるわけないだろう」
 馬鹿馬鹿しい。と、付け足されるほど、不快を通り越して、呆れかえっているサンダルフォンに、特異点は、好きなんだよね? と確認をしてしまう。サンダルフォンは、斜に構えたような、小馬鹿にした表情でもなく、目をぱちくりとさせて、何を言っているんだというように、まあ慕っているさと同意を示す。照れてもいない。だから、ますます、特異点は混乱する。
「だって、最近二人で一緒に居るし」
「きみが仕組んだことだろう」
「いや、休みでも態々一緒にいるでしょ! 流石にそこまで仕組んでないし!」
「どうして休みの時まで知ってるんだ……。あの御方と珈琲の研究をしているだけだ」
「それだけぇ?」
 不満に、口を尖らせる特異点に、サンダルフォンはため息を吐き出す。
「きみは……君たちはいったい何を期待してるんだ」
「好きなら、恋人になりたいとか思うもんじゃないの?」
「……空の民の関係性と思考だろう? 天司にあてはめることじゃない」
「ハールートとマールートはどうなのさ」
「あの二人は、そういう風に造られているだけだ」
 ぐぬぬと納得しきれていない特異点に、サンダルフォンは肩を竦める。特異点が、団員たちがどうやら自分たちを恋仲にしようとしていることには勘付いていた。そこまで、鈍いわけではない。ルシフェルに向ける感情に、純粋な思慕だけではない、邪な感情が乗せられていることを自覚している。けれど、彼らの手法にのるつもりもない。サンダルフォン自身が、望まない。サンダルフォンは、決して、ルシフェルと恋人になりたいわけではない。番になりたい訳ではない。特別になりたいわけではない。
 感情を優先して空回ってばかりだった。心が幼かった、自制を知らなかった。今なら、抑えられる。もう、自分の心を追いかけない。そっと、胸の奥底に、誰にも触れられないように仕舞い込む方法を覚えた。それこそ、サンダルフォンの心を形造ったルシフェルにも触れられないように、厳重に。誰にも、明かさない、渡さない。
 もしも。ルシフェルが特別な相手を、選んだとしても、その誰かがルシフェルの隣にいても、サンダルフォンは何も感じない。傷つく事はない。ああ、やっぱりと、思うのだ。仕方ないと笑える。祝福ができる。口にしたところで特異点は理解が出来ないことだ、誰にも、同意は得られないと分かっている。ネガティブな思考と片付けられると目に見えている。
 だから、サンダルフォンは何も言わない。
 当事者でもないというのに、不満気な特異点の額を小突いた。



 冷たい風が頬を撫でる。気温変化に、団員たちの何人かが体調を崩しているようだった。
「サンダルフォン。顔色が悪いが、どこか不具合でも?」
「そうですか?」
 自分の顔に触れる。手で測る限り、特別な変化は感じ取れない。定期的な休日で、昨日出向いた討伐依頼も、激しい戦闘ではなかった。畑を荒す魔物を追い払う程度の、天司に何をさせるんだと思ってしまうような内容だ。もう、悪夢も見ていないから、精神にも負荷は無いはずだった。自認している限り、何処にも異常はない。擦れ違った団員たちにも指摘されていない。けれど、ルシフェルの眼には、悪く見えたのだろうか。
「おいで」
 手招くルシフェルに、サンダルフォンは警戒心の欠片もなく近寄り、ルシフェルを見上げる。まっすぐサンダルフォンを見つめる蒼穹は優しく、慈愛に満ちていて、サンダルフォンは気恥ずかしさを覚える。ルシフェルの手がサンダルフォンの頬に触れる。エーテルを、流し込まれている。暖かなものが流れこみ、サンダルフォンの肉体に還元される。サンダルフォンはそっと、目を閉じた。

 そんな天司二人を見て、特異点は口を尖らせる。
(何が顔色が悪い、だよ)
 サンダルフォンに触りたいだけじゃないか。なんて口を挟めば、ルシフェルに夢見てるサンダルフォンは何を言っているんだとバカにするだろうし、何よりルシフェルがおそろしいったらない。ルシフェルに、あんなにでろでろに甘やかされて、明らかな特別扱いをされておいて、ルシフェルから好意を寄せられてるなんて思ってもいないなんて、サンダルフォンは鈍いにも程があるのでは? からかってやるつもりで、特異点の年ごろ特有の悪戯心で、ルシフェルが席を外した一瞬、佇んでいたサンダルフォンに声を掛ける。
「二千年前からあの方はあの様子だ」
 肩すかしをくらう。
「えぇ……」
「まあ、今は些か、過保護がすぎるように思うがあの方にも思うことがあるのだろう」
 目を伏せるサンダルフォンに、言葉を掛けようとして、ちくちくと刺さる視線に、言葉を飲みこむ。きっと、視線の主は無自覚なのだろうが、牽制をされているようで、そのつもりはないというのに、居心地が悪い。
「サンダルフォンのことが大切なだけだよ」
「どうだろう、な」
 サンダルフォンは、諦めたように笑うから、胸が苦しくなる。どうして、諦めた顔をするのだろう。好きな人と、慕っている人と一緒にられるのに、もう、役割も何もない関係でいられるのに、どうして、歩み寄ろうとしないのか。望んでいたことじゃないのか。問い詰めたくても、思い詰めたようなサンダルフォンに言うには酷な気がして、躊躇う。
 ふと、背中に刺さっていた視線が無くなっていたことに気付いた。



 先日立ち寄った島で購入した、珈琲を飲んでいたときだった。立ち寄ったのは、長閑で、緑が豊かな島。平穏で、時間の流れが、ゆるやかに感じられるほどに変化が薄かった。隣にルシフェルがいたからか、研究所の中庭が何度も重なり、息苦しさを覚えた。サンダルフォンにとって、最も優しい時間だった。かつて、唯一、待ち望んだ時間だった。小さなテーブルを挟んで、向かい合って珈琲を手にする。ルシフェルが淹れるときもあれば、サンダルフォンが淹れるときもある。多くの場合は、サンダルフォンが淹れていた。サンダルフォンは、それだけ、時間を持て余していた。
「手を出してごらん」
 突飛な言葉に、はっとして、サンダルフォンは言われるがままに、両手を差し出す。ルシフェルはその様子に、一瞬だけ呆気にとられてから、笑みを浮かべ、差し出されたうち、左手を取った。骨ばった手を撫でて、するりと、細い指を取る。元素が、輪を形造る。
 サンダルフォンは、戸惑いながらルシフェルを見上げる。ルシフェルは、満足したように笑みを浮かべるだけだから、サンダルフォンは何も言うことが出来ず、途方に暮れた。ここに、団員がいれば、特異点がいれば冷やかすなりしたのだろうか、生憎と、二人きりで、説明をする人間はいなかった。

「素敵な指輪ですね」
 ルリアがほれぼれとしたように、サンダルフォンの指を飾る装飾を尋ねた。ルリアが知る限り、サンダルフォンはあまり装飾の類を好まない。珍しくアクセサリーを身に着けていたので、思ったままのことを口にした。サンダルフォンによく似合っている指輪だった。サンダルフォンは開きかけた口を閉じて、指輪に触れて、何を言うべきか迷う。当事者でありながら、サンダルフォンも何が何やら分からないまま与えられた指輪だった。素敵、なのだろう。デザインや美醜について、よく分からない。ただ、ルシフェルさまから頂いた、というだけだった。
「ルシフェルさまが施してくださった」
 それしか、言うことが出来ない。すぐ傍で話を聞いていた特異点は、思わず、サンダルフォンを凝視してしまう。
「きみは、ルシフェルさまも気に掛けているし、言えば同じものを作ってくださると思う」
「え」
「どうした、特異点」
「どうかしました?」
 首を傾げる二人に、言葉を失う。だぶんではなく、きっと、ルシフェルは施しのつもりで指輪を渡したのではないし、サンダルフォンだから、サンダルフォンにしか、その指輪は与えない。それを言っても、サンダルフォンは否定するし、ルリアは罪悪感で悲しんでしまう。どうにか、話題を逸らしたかった。
「いや、あの、指輪なら、次の島で見ようよ」
 特異点の焦った言葉に、サンダルフォンはルリアをちらりと見て、にやりと、合点がいったとでもいうように、
「特異点が選んでくれるみたいだぞ」
「ほんとうですか!」
「う、ん!」
 サンダルフォンが、にまにまと笑っている。人の気も知らないで! という怒りやら遣る瀬無さやら、ルリアの笑顔が染みるやらで、忙しい。



 珍しく、一人でいたルシフェルに声を掛ける。言っておかなければ、また擦れ違いが起きそうで気が気でならない。そっと見守るつもりでいたが、なんだかきな臭い。
「サンダルフォン、指輪の意味全くわかってないよ」
「そう、か」
 顎に指を掛けて考え込むルシフェルは相変わらず何を考えているのか分からない。
「言わなきゃわかんないよ、サンダルフォンは」
 特異点の言葉に目を閉じたルシフェルは、ぐっと眉間にシワを寄せている。それが、言葉に堪えるようであり、あるいは、特異点にサンダルフォンについて、指摘されたことが不服なように思えた。



 手を空にかざす。血潮が透けて、それから、指輪が存在を示す。薬指にはめられた指輪は、外すタイミングが分からない。依頼や、休みが重なるから、殆ど四六時中、ルシフェルと過ごすことになる。贈り主の手前、つけなければ失礼だろうと、指輪をしている。サンダルフォン。名前を呼ばれ、振り向けば、思った通り、ルシフェルがいた。難しい顔をしているから、何かあったのだろうかと、緊張が走った。尤も、ルシフェルを前にして緊張をしていない時なんて、無いことだった。
「空の民の間では、愛するものに、指輪を贈る習慣がある」
「そうなのですか?」
 首肯したルシフェルに、サンダルフォンは、また唐突な言い回しだなと思い、それから、そんな習慣があるのかと空の世界は広いなと、緊張が解けた頭で、感嘆する。
「それに倣ったのが、どうだろうか」
「……そうですね、」
 サンダルフォンは、言葉を探す。左手の薬指を飾るシルバー。サンダルフォン自身に、デザインの善し悪しは分からないし、何よりルシフェルから与えられたものを拒むことはない。必要なのは客観性だろうと、女性団員たちの反応を思い返す。彼女たちは良い指輪だと言っていた、あなたに似合っていると言われた。だから、
「なにか、言葉があれば良かったのではないでしょうか。急に渡されては、驚いてしまいますから。でも、きっと、ルシフェルさまから贈られるものを喜ばないものはいません。贈る相手はどなたですか?」
 俺の知っている方でしょうか。サンダルフォンの無垢な言葉に、真摯な言葉に、ルシフェルは発しかけた言葉が喉に引っかかって、出ない。ちがう、愛するものは、それは。どうかしましたか? 何か、いけないことがあったのだろうかと不安がるサンダルフォンに、どうにか言葉を絞り出す。
「なんでもないよ」
 そういったルシフェルに、サンダルフォンは安堵したようだった。
「よかった……。指輪はお返ししますね」
 サンダルフォンが指輪を外そうとしたのを、制する。不思議がるサンダルフォンはどうしたのだろうと、ルシフェルを見上げる。
「その指輪は、きみが付けていてくれ」
「ですが……わかりました、有難く、いただきます」
 ルシフェルが、あまりに、真剣にいうから、サンダルフォンは指輪にかけていた手を離した。



 この顛末を無理矢理に聞きだした特異点は声を荒げる。ここが甲板で良かったと、サンダルフォンは呆れる。甲板にしても、人は多いのだが。
「そ、そこまで言われたのに!? なんで!? もう告白じゃん!」
「どこが告白だ。そもそも、あの人が俺を愛するわけが無い」
「でもぉ……」
 地団太を踏んだかと思えば、自分のことのように肩を落とす特異点を見ていると、別に意地悪をしているつもりもないのに、いじめているつもりもないのに、ちくちくと罪悪感に駆られる。
「あの方は、俺を必要としない。廃棄どころか、愛玩としてすらも、手元に置こうとしなかった。あの御方にとって、俺は、その程度でしかない。俺は、その程度の価値で完結している。愛されるなんて、ありえないことだ」
「二千年も前のことじゃん!」
「たった、二千年のことだろう」
 声を荒げて突っ込んだ特異点に対して、きょとりと、サンダルフォンは何を言っているんだと言う様に言うから、何も言えなくなってしまう。根本が、きみたちとは違うと言われているようで、哀しくなる。サンダルフォンに、そのつもりはないのだろうが、いつも口にする嫌味交じりの否定とは違うのだ。頭を抱える。サンダルフォンは言い聞かせるように、口を開いた。
「……何度も言っているだろう。俺が、あの方とそういった関係になるなんて、ありえないことだと。あの方にとって特別は俺ではないし、俺はあの方に、選ばれない」
 選ばれてるよ。特異点がいったところで、無意味で、ルシフェルが囁いたところで、サンダルフォンは、ルシフェルの不具合を疑ってしまう。言葉を、受け止めない。呑みこまない。サンダルフォンは、ルシフェルにとっての自分の価値を、見いだせない。

 抑々、役割をはたして、スペアという価値も無くなったから、不思議ですらあった。どうして、ルシフェルさまは自分に良くしてくれるのだろう。どうして、今も手元に置いてくださっているのだろう。結局、御優しいから、慈悲深い御方だから、憐れんでくれているのだろうと、自己完結をする。誰の言葉も届かない、完結された思考。ルシフェルの言葉すら、届かず、組み込まない。
 届かない、伝えられない、それが、ルシフェルの罰だ。ルシフェルに、二千年越しに、与えられた、課せられた罰だ。

 ルシフェルは自分に課せられたものを知っている。
 誰も、サンダルフォン自身すら気づいていない、傷付けて、苦しませてきた、天司長の役割に課せられたものではないルシフェルの罰。ルシフェルという個体が犯した罪だ。あの時、何と返せばよかったのだろうと、らしくもなく、悔やむことがある。たらも、ればも、無意味な臆測でしかないと理解をしても、サンダルフォンを前にして、伝わらない感情を持て余す度に、想像してしまう。否定をされることもなければ、受け入れられることも無い。虚しさを覚えるほどの、一方的な感情。それでも、ルシフェルは、サンダルフォンを諦めることができない。安寧を抱いた存在を、手放すことを、もうしたくない。サンダルフォンが、自らの元を離れることに、脅えるようになった。空の世界を見た彼が、するりと、ルシフェルの手から、ルシフェルという籠から飛び立つことに、恐怖を抱いた。歪んでいると、自認している。進化を司るものにしては、ひどく、退化した思考。役割を超越した、自我が抱いた、欲望を、ルシフェルは、恥じた。



 視線の先で、サンダルフォンと特異点が話をしている。友人として、親しいのだと、分かっていても、気が気でならない。特異点が、サンダルフォンを支えてきたからこそ、今、ルシフェルは此処にいる。特異点への感謝はある。それでも、負の感情は、沸き起こってしまう。
 何を、話しているのだろう。サンダルフォンが、特異点を笑う。胸がざわめいた。小馬鹿にしたような表情。彼は、あんな顔も出来たのかと、再び肉体を得て、騎空挺に身を寄せるようになり、初めて知った顔は、ルシフェルには向けられる事が無い。彼の全てを知る、彼を形作る唯一は、自分だけでありたい。彼の心を占めるのは、自分だけで良い。その資格は、失っているのに、傲慢な感情だとわかっているのに、思ってしまう。
「ルシフェルさま、どうかされましたか」
 特異点と話していたサンダルフォンが不安そうに、駆け寄ってきたことにも、気付けなかった。けれど、優越感を、抱いた。特異点との、友人との会話を途切れさせても、私を、優先するのだということに、昂揚感を得た。彼の中で、まだ、私は、優先されるべき存在なのだと、安堵をした。
「なんでもないよ」
 そう言ったルシフェルは、悲しげな顔を、曖昧な笑みで隠したサンダルフォンに、この答えは良くなかったと、失敗だったのだと悟る。また選択を、間違えた。
「楽しそうに話をしているようだったから、つい、見てしまっていた」
 そういったルシフェルに、サンダルフォンは目を丸くした。
「楽しそうでしたか」
「ああ」
「そう、かな。……特異点ったら、おかしいんですよ」
 思い出したのか、くすくすと、ふわりとした赤味のある黒髪が、サンダルフォンが笑うたびに揺れる。愛しさが募る。やる瀬なさを抱く。分かっている。ルシフェルでは、彼に、サンダルフォンに、この笑顔を作らせることはできない。無垢に変わりないのに、鮮やかになった笑みは好ましいのに、寂寥感を抱く。ルシフェルだけの、サンダルフォンではないと、思い知る。

 かつて、ルシフェルだけで完成された世界で生きていたサンダルフォンが、浮かべた笑みに、呼びかける声に、安寧を見出していた。それで、良いと思っていた。このままで、良い。役割を得なければ良いとすら、思った。役割に縛られて、天司長に仕えるサンダルフォンを想像することが出来なかった。無垢な笑みが、歓迎する呼び声が、消え失せることを遠ざけようとした。その果てに、失った存在だった。

「サンダルフォン」
「あ、申しわけありません」
「謝ることはない。きみが楽しいなら、私も喜ばしいよ。これから、珈琲を淹れるのだがきみもどうだろうか」
「良いのですか?」
「勿論だよ」
 ルシフェルの言葉に、頬を薔薇色に染めて、楽しみで仕方ないというようなサンダルフォンは特異点に断りを入れている。愛らしい姿を見つめながら、どの珈琲を淹れようかと考える。お待たせしましたと駆け寄るサンダルフォンの左手の指が、きらりと、光を反射した。

 二千年前傷付けた。二千年間苦しめた。その分を、注ぎ込む。埋めるように。サンダルフォンへ抱く想いは、尽きないと、ルシフェルは確信をしている。きっと、何千年経っても、ルシフェルはサンダルフォンを愛しく思う。今は、罰を受け容れよう。伝え続けて、いつか、理解してくれる日を、贖罪の果てに、サンダルフォンが信じてくれる日を、願う。

2018/12/22
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