ピリオド

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 かつてカナンの地にて失われた天司長ルシフェルを取り戻したのはそう昔のことではない。
 復活を果たしたもののその身に宿していた力は完全には戻っていない。完全とは言い難い力を取り戻すため、ルシフェルは特異点が率いる騎空団に身を寄せることになった。
 サンダルフォンもまた、返還した天司長の力は当然として、天司長のスペアとしての役割を果たしたためか大幅に弱体したものの特異点に引き留められ、以前と変わらず身を寄せている。
 ルシフェルは、かつての問いを、願いを覚えていた。中庭とは程遠い空の上で、珈琲を飲み微笑を浮かべた。その美しい微笑を目にするたびに、サンダルフォンは、この幸せは何時まで続くのだろうと考えてしまう。
「サンダルフォンさん、ルシフェルさんが探していましたよ」
「わかった」
 緩やかな風と心地よい太陽の温もりに、甲板で微睡んでいたサンダルフォンはルリアに呼び掛けられ背を伸ばした。こきりと骨が鳴る。
「あの」
「まだ、何か?」
 ルリアはもごもごと言いよどみ、それからしゅんと肩を落とした。
 サンダルフォンは彼女には何もかも御見通しなのだということを知っているし、自分のことで心を痛ませる彼女をみて心を動かされるほどには、彼女のことを友人として大切に思っている。
 サンダルフォンは自身の気持ちに気付かない程鈍くはない。自身がルシフェルに対して敬愛以上の、俗的な思慕を抱いていることには気づいていた。
 それをどうこうするつもりはない。
 同じだけ想われたいなんて烏滸がましいにも程がある。告げて困惑させるなんてのはもってのほかだ。
 自分は彼の人の傍にいたいだけだ。
「ありがとう、蒼の少女。だけど、俺は今のままが良い」
「でも!!」
「あの御方が生きているなら、傍にいることを許してくださるなら、それでいい。俺は、あの御方の傍にいたい」
 あまりにも穏やかに言うサンダルフォンに、ルリアは何も言えなくなる。そんなことない、なんて言っても彼が聞き入れてくれないことは分かってしまう。
「想うだけなら、自由だろう」
 穏やかに言うくせに、どうしてそんなに泣きそうな顔で笑うのか、ルリアには分からない。好きと言われて悲しむ人なんていないのに。
「おそらく珈琲のお誘いだろうな……。 きみも来るかい?」
 ルリアは首を振った。サンダルフォンは何時でも待っているよと言ったがルリアはきっと行く事は無い。2人きりの彼らの時間は穏やかなのに、とても寂しくて悲しくなる。ルリアはきっと泣いてしまう。

2018/05/15
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