ピリオド

  • since 12/06/19
「きみの性格だとか、性癖についてはどうでも良いが顔は好きだよ」
 情事の名残を濃く残した寝台の上。サンダルフォンは後始末もそこそこにして、疲労した体を放り投げていた。サンダルフォンとルシオ、どちらのものか分からない、白濁を吸い込んだぐしゃぐしゃのシーツ。サンダルフォンはしなやかな四肢を伸ばして、珍しく、邪気も無く、笑って言い放つ。
「顔だけですか?」
「顔だけだ。……それ以外でどこを好きになれって言うんだ?」
 ルシオがからかう様に問いかければ、サンダルフォンはくすくすと笑いながら答える。気分が良いようだった。随分な言い方であるが、ルシオには腹立たしいなんて感情が起こる事は無い。不愉快に思うことも無い。自身の容貌については、絶対的な自信がある。顔だけ、なんてきっぱりと言い切られるとむしろ清々しさすら感じて、面白いとすら思う。
 寝台の上から起き上がりかけた体を横たえて、視線を合わせる。赤い眼が、三日月を描き、細く長い指が、ルシオの頬を撫でる。
「まあ、あの赤いトカ……んんっ。ビィサマに熱心なところは好ましいと思うぞ」
 赤いトカゲ。と、いつもの調子で言いかけたところ、刺々しい雰囲気を出しかけたルシオに気付いたサンダルフォンは咳払いをした。
「おや。こういう行為の相手というものは、一番を求めるものでは?」
「はっ」
 ルシオは手持無沙汰な手を、サンダルフォンの細い腰に回そうとした。しかし、鼻で笑ったサンダルフォンに御さわり厳禁とでもいうように小さなしっぺを食らう。
「私の一番になりたいとは思わないのですか?」
「思うものか」
 とろりと下がる瞼に抗おうとはしない。ルシオにも疲れがあり、瞼は重い。けれども今は夢心地でぼんやりとしたサンダルフォンが面白い。
「情事の相手というものは、相応にして一番になりたがるものではないのですか?」
「ん……? きみは存外、聞きたがりだな……。別に、きみは情に深いわけではないだろう。うん、そういうところもいいな。きっと、きみはおれをころしてくれるだろう? だから、すきだよ」
 徐々に聞き取り辛い言葉になっていたものを吐き出したサンダルフォンは、すやすやと寝息を立てている。肌寒いのか、するりと熱源を求めるようにルシオにすり寄った。
「寝てしまった」
 なんだか可愛らしい様子を見せてくるものだからつい肉体的に反応してしまったのだが相手は心地よさそうにしている。ルシオは下肢に集まった熱をどうしようかと思いながらまあいいかと目を閉じた。抱き寄せればサンダルフォンは静かに腕に収まった。
 ルシオは存外にサンダルフォンという「天司長」を気に入っているのだが伝わっていないらしい。伝えたいとも思っていないのだが。
 サンダルフォンの言う通り、もしも敬愛するビィを再び傷つけようものなら躊躇うことなく刃を向けられる。
 ただ体を交わらせる戯れを繰り返していく中で、情が皆無というわけではない。もしも殺さざるを得ないときは苦痛なく殺してあげようと思う程度には、情はわいている。
 すやすやと眠るサンダルフォンの下肢の後始末を考えたが、ルシオも微睡に身を委ねた。

2018/05/07
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -