ピリオド

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「〜♪」
 ルリアは上機嫌にグランサイファーの甲板で洗濯物を取り組んでいた。今日は絶好の洗濯物日和だ。気候の悪い空路に入ってから洗濯物はたまるばかりだった。たまに洗濯物をしても室内干しで、なんだか気持ち悪い。
 洗濯物はお日様で乾かすのが一番気持ちいいことを、ルリアは知っている。
 良い天気だと洗濯物がよく乾く。それから、シャボンの香りがなんともいえない、幸せな気分にさせる。
 自分以外にもあちこちで小さな影や大きな影が洗濯物を取り組む様子が見えた。顔はみえなくても、笑い声が聞こえる。
 はためく洗濯物がおかしくて、それに翻弄されているのが楽しくて。
 きっと幸せってなんてことない物から生まれるんだろうな、と考えながら、真っ白いシーツを取り組もうと背を伸ばす。
 お日様とシャボンの香りに包まれて眠る今日は、きっといい夢が見れる。
「あれ?」
 シーツ越しに何かが揺らめいた。形から大きな鳥だろうかと思っていたところで、風が吹き上がる。
「はわわ!?」
 捲りあがったシーツの先で、団員として共に過ごしている天司が翼で何かを包んでいる。よく見れば、小柄な(それでもルリアよりは大きく、青年の形をしている)彼が、すっぽりと収まっていた。それから、頭一つ大きな彼とは目があう。
 彼は口元に人差し指をたてて、少し目じりを和らげた。それはルリアに向けたものではない。すっぽりと包みこんでいる彼の為の表情だと、知っている。ルリアはこくこくと頷いてから、自分でもどうやってあの場を抜け出したのか分からないまま船内にいた。ずるずると壁にもたれかかる。
(はう……顔があついです)
 とても、綺麗な光景だった。真っ白で、光を受けて反射して、キラキラとしたルシフェルの翼と、猛禽のような力強さとしなやかさを持つサンダルフォンの翼がちらりと覗いていた。
 ルリアや、団員にとって彼らの翼は物珍しいものではない。戦闘やちょっとした用事の際に彼らは翼を見せるし飛行することもある。最近では彼らが天司というおとぎ話の存在であることをうっかり、忘れてしまうくらいに馴染んでいるのだ。
 なのに、
「なんだか、見ちゃいけないものをみてしまったみたい……う〜」
 これは、秘密にしておかないと。ルリアはそう思いながら、顔の熱をさまそうとパタパタと手で風をおくった。

2018/04/16
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