「ちょっとぐらい…いい、よな?」

そうだ。これは起こすためだ。起こすために触るんであって決してやましい気持ちなんて…。
俺の指先が逆之上の頬に触れる。

「ぎゃあ!」

自分から触れたはずなのに思わず声が出た。なんていうか、当たり前だが……柔らかい。

「………………」

これ以上ないぐらい心臓が速く動いている。滑らかな肌の感触に思わず唾を飲み下した。
指が頬をなぞりゆっくりと下へ降りていく。首筋に到達しそれのひどく白いのに驚いた。
逆之上は基本的に肌が白い。俺は運動部だから適度に焼けているから比べれば一目瞭然かもしれないが、逆之上はそこらの女子と比べても白かったり綺麗だったりするから驚きだ。

「逆之上……」

小声で呼び掛けてみるも応答しない。
これは本格的にやばいかもしれない。
こんな肌をなで回している最中に起きられても困るが起きてくれなければ歯止めが効かない。俺は徐に逆之上に顔を近づけた。
鼓動が半端なくでかい。
なんかもう耐えられなくなって目を閉じた。

「っ、…………」

やってしまった。
急いで顔を上げ目を開ける。
触れた、確かに触れたぞ。驚きと、恥ずかしさと、ほんの少しの罪悪感と、そんでもって認めざるを得ない、幸福感、みたいなもの。
目を閉じた直後に感じた感触が未だに抜けなくて俺は空を見上げて大きく呼吸した。

「おい」

「うわあああああああああああ」

「……なんだよ」

すると声をかけられて思わず叫んだ。逆之上が起きたんだ。

「あー、もうこんな時間かよ。意外に寝れたな」

逆之上が身を起こしたので俺はいてもたってもいられず立ち上がりそわそわと足踏みする。

「どうしたんだよ」

「え!?いや、何でも……ないけど?」

「え、いやお前明らかにおかし、」

「何でもねぇから!ほら早く帰ろうぜ!!」

確実に誤魔化しきれてない俺の動揺を感じた逆之上が訝しげに尋ねてくるが言い訳も嘘も得意じゃない俺は無理やり話を終わらせた。逆之上の背中を押して屋上を出ていく。

「おい、何すんだよ!」

「だ、だから早く帰ろうって」

「ばか、分かったから押すんじゃねぇ!!」

強引な俺に折れたのか逆之上は口では色々と言うものの素直に階段を降りていく。
俺は逆之上の背中を見ながら思った。
これから先逆之上の顔を見て、普通に話せるんだろうか。





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