「おーい、逆之上!」

俺は自分の欲求を我慢して普通に声を掛けて起こす。これはエロゲじゃないこれはエロゲじゃないと自分に言い聞かせながら。
……そううまくいくもんか…!

「逆之上、おい、逆之上!いい加減起きろって!!」

少しどきりとしたがやましい気持ちはないと自分の中で割りきって逆之上の肩を揺さぶる。
すると、うーだとかあーだとかいう唸り声を発して逆之上が身じろいだ。

「ぁ…なんだ……お前か…」

「お前か、って…」

逆之上が重たそうに瞼を持ち上げた。ぼんやりとした瞳が俺に焦点を合わせる。
ゆっくりと上体を起こして頭を掻く。それから辺りを見回してからまたこちらを見る。

「なんだ、こんな時間まで起こさなかったのか」

「いや、だって起こすなって言ってたじゃねぇか」

「…………そうだっけ?」

逆之上は寝る直前に起こすなと言った。それをそのまま伝えると逆之上はどうやら記憶が曖昧なようで首を傾げるのみだった。
逆之上が立ち上がる。それに釣られて俺も立った。すると帰るか、と逆之上が言ってきたからそうだな、と俺も返した。

「あー…眠い」

「まだ寝たりないのかよ」

「お前の膝、固くて寝にくかったんだよ」

「なんだよそれ、じゃあやらせんな」

せっかく貸してやったっていうのにと逆之上の反応にちょっとむくれていると、逆之上は意外そうに俺を見てからどこか拗ねたように目線をそらした。ばつが悪そうにうつ向いてから控えめに俺の額を叩いた。

「いてっ」

「ばぁーか」

思わず額を押さえた。
突然、俺の首の後ろへ腕が回される。

「俺は…お前以外にこんなことさせねぇんだからな!」

俺は逆之上の言葉に絶句した。何も出てこない。
いや、だって。それってどういう意味だと考えてみる。逆之上が腕を回したまま歩いていくもんだから自然と俺も引っ張られる。

「……帰んぞ!」

そう言う逆之上の顔が赤い。
あー…確かエロゲにこんな描写があった。
あいつの顔が赤いのは俺たち2人を照らす夕陽のせいだけではないはずだ。って。
今まさに、そんな感じだ。

「おう。……へへ」

「あ?なに笑ってんだよ」

「いーや、何でも」

頬が弛むのを抑えられない。知らず笑みが溢れた。
逆之上が訝しげに俺を見たけど構わず笑顔で返した。
何ていうか、こんなことで舞い上がる俺ってつくづく安い男だな。






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