その男は女好きな奴だった。
見る度に違う女を連れ違う香水の香りを身に纏っていた。
掴みところがなく飄々としていて、口許に笑みを浮かべた目鼻立ちがはっきりしている奴だ。
同じクラスという以外、真面目が服を着たと言われる俺とは何の関わりもない男だ。
そのはずだった。


「はぁっ、う…」

「あっ、あぁっ!くっ…はぁ、そこ、はっ…あッ!」

それなのに俺は、ろくに会話を交わした事もないこの男を犯していた。
何でこんな事になったのかと聞かれれば、魔が差した。
それ以外言い様がない。
何が発端だったのか、ふと図書室から戻る時に聞いた女達の会話を思い出す。
内容はこの男についてだった。
行為中汗ばんだ逞しい身体、熱っぽく行きを吐き出す表情は色気が増してたまらない、と。
そんな内容だった。
その会話に触発されたのかもしれない。
教室に戻りこの男を見ると欲情し、気づけば床に押し倒していた。

開けたシャツから覗く日に焼け隆々とした胸確かに逞しく、不釣り合いに淡く色付く突起は嫌に興奮を煽られる。
男に犯され酷く屈辱的な筈なのにこいつの表情は苦痛の中にも欲情した何とも言えない色気を纏っていた。

「確かに、たまらない、なっ…」

無意識にそう呟いていた。
疾うに下校時間を過ぎ静まり返った教室に互いの息遣いと濡れた音が響く。
そして俺の下で乱れ喘ぐ男。
また、興奮が煽られる。

「うっ…な、に…考え、てんだっ…」

「ああ、悪い…」

「はぁっ、う…集中、しろよっ…ぁっ…もっと、来いよ…」


咎める言葉ではなくもっと甘美な、誘惑を囁かれた。
恍惚とした表情で煽られ、ずれかけた眼鏡を指先で持ち上げる。
何も考えず、ただこの快感に溺れてしまおう。



Fin.



2013/3/18


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