▼quindici anni


※ミスジョルっぽいけどCPではないつもり
 ジョナディオあり
 ASB時間軸




「死にたい…………」

グイード・ミスタは現在進行形で頭を抱えていた。普段細かいことにこだわらないミスタだったが、今回ばかりはそうは言っていられなかった。
ミスタは無類の女好きだ。それこそスケコマシな同じイタリア男シーザーと並ぶくらいには。特徴としてはモニカ・ベルッチ似で少し焼けたぐらいの健康肌だとたまらない、さらに巨乳ならなおさら最高といった感じだ。年も健全な18歳、成人も果たして性欲は過去最高に盛んな時期。だからといって、今回のことは少しとは言えないレベルでミスタにとって異常事態だった。
話は簡単、男相手にムラッと来てしまったのである。
男と言っても神の名を持つ男の血を引き、彫刻のような美しい体を持ち、年が幼いだけに相応の天使のような顔立ちの年下の少年にだ。開いた胸元が性別を間違わせることは無かったが、服を変えてしまえば迷ってしまうような女よりも綺麗な顔で、成長期で華奢に伸びた手足など、ソッチの方面の人には好かれそうな外見をした15歳。年齢的にはもう性欲も盛んでおかしくないはずだが彼からはそういった雰囲気は感じない。それがますますミスタを混乱させていた、という事にしてしまいたい。
真っ赤な舌が品のない食事の後に指を舐めたり、腕に微かな痣が残っていたり、細い腿が着替えの時に晒されて白く光っていたり、そういうのを近くで見ていたミスタは幼い色香にすっかりやられていた。一瞬ムラッと血が騒いでは後悔する、その繰り返しだ。ジョルノ自身は意外と自分の体に頓着が無く汚れるとすぐ脱いで着替えてしまうからこれがまた回数が多くて参っている。ジョルノで抜いたことはないがムラッとするのは事実で、自身の葛藤とジョルノへの申し訳なさで頭がいっぱいだった。
といっても、ジョルノとアレなことをする想像に興奮するわけではないから、自分はストレートだとミスタは思い続けている。勿論他の男も論外だ。ただ綺麗なものに反応してしまうだけ。そうシーザーに相談すると、それはストレートではないのではという返答をされたため、実際にジョルノを見せると黙り込んでしまった。年上ぶる彼にザマアミロと思った。長く悩んだ結果、男同士でもジョナサンやジョセフなどの素晴らしい肉体美には惚れ惚れするものがある、それと一緒ではないかと最初とは全く別の返事をされた。イタリア男を唸らすぐらいにはジョルノは綺麗だった。
ちなみに、ジョルノの父であり恐ろしい程の美貌を持つ夜の帝王さんは成人していたということもあったが、隠しきれない悪意やジョルノより多く出ている色気にシーザーは喉元まで胃酸がきてしまい、ミスタも気分を損ないとても比較にならなかった。恐ろしい遺伝子だ。

「どうしたんですかミスタさん」
「……花京院んん」

たまたまいたグループ内の良心花京院があからさまに落ち込むミスタに声をかける。日本人の彼は日本文化を写したような寡黙で気遣い上手である。彼もパッと見は比較的女性的だが、ポルナレフといたのを見たときミスタよりも人に容赦がないことを知ってしまった。人は外見によらないと思った。

「いや…なんでもないんだよォ……」
「でもさっき死にたいって……悩み事ですか?珍しいですね」
「悩みっちゃ悩みなんだけど……、駄目だ、これあんまり言いふらすとあいつにバレっかも…!もーヤダ……」
「ええと……?僕でよければ相談にのりましょうか?内緒にしますよ」
「……おめーほんっとイイやつだよなぁ」
「あ、ありがとう?」

どことなくフーゴを思い出しながらこれ以上一人でうんうん言いたくなくて花京院にすがる。垂れた赤い髪が一房視界に入る。トリッシュに似た鮮やかな色で、日本人らしからぬ色だ。

「……ジョルノのことなんだけどよォ」
「うん…」
「……引かねぇ?」
「引かないよ」
「…ジョルノさ、ちっと普通じゃないくらい綺麗な顔してんだろ。体も細ぇし。だから……、あ゙ー、つまり、ムラッとくんだよ!!でも俺は女の子が好きなの!わかる!?」
「…ああ……」

言いづらくて勢いに任せて言いきると、花京院はどこか気の抜けた声を出した。引かないと言ったのに引かれたと思って体を離したが、どうやら引いた訳ではないらしい。どちらかと言えば、遠い目をしてまるで肯定しているようだった。言ってから思い出したのだが、花京院は初対面のジョルノに吐き気を催してトイレに駆け込むくらいにはディオの遺伝子に敏感だった。つまりミスタ以上に溢れる色気だとかカリスマだとかに当てられているということだ。話したのが花京院で良かったと解決する前から思ってしまった。

「僕自身、そうだね、…むらっとしたりはしないけど、ジョルノ君は本当に綺麗だよね。遺伝子的には承太郎達と同じくらいまで大きくなるんだろうけど……、今の成長途中ぐらいな感じがかわいくは感じるよ。僕より小さいし」
「花京院……」
「おまけに成長期って先に伸びるから細く見えるよね。ジョルノ君は全体的に細いから確かに腕とかは女の子と変わらないかも……」
「だよな…!良かった……、女の子と似てるからそうなるだけで、俺ゲイじゃないよなァ!?」
「うん…と、ジョルノ君だけなら別にゲイではないと思うよ…」
「Grazie、花京院!俺おかしくないよな?」
「あー、…うん」

途中から花京院は何故か気まずそうになったが、ジョルノが女の子に似ているせいで女の子にムラッときているのと変わらないとわかったことでミスタは気が大分楽になっていた。目の前の花京院にハグをかまして、手を握ってブンブンと縦に振る。すっかりいつもの調子に戻りかけていた。
そのせいで、花京院が自分の先を見ていることや、あまつさえその視線の先の、自分の背後にいる人物に全く気がつかなかった。

「……ミスタ」
「っ!!あ、よう、ジョルノ……」
「あんた何言ってんです…」
「……どっから聞いてた?」
「僕が女の子と似てるからってあたりですが」

眉をひそめて不機嫌そうに言うジョルノはいつも通り綺麗な顔をしていて、女の子に似ていると思い込もうとしていたせいで長く直視出来なかった。花京院は本能から一歩下がってしまい、この場をどうにかしなければと思ったが下手に喋るとジョルノを男として貶すことになりなかなか踏み出せない。ミスタが先に平謝りしたがジョルノは未だに不服そうに顔を背けてしまった。正直に言って、その姿は拗ねた子供のようだと花京院は徐々に二人から離れながら思った。



「悪かったって!誤解だっつーの!」
「何がです僕にもわかるようにも説明して下さいよねぇ」
「それは無理!」
「はぁ…あのねミスタ」
「ヒィ、はい……」

どうみても怒っている。そんな人を前にして綺麗だとかなんとか言っていられる程ミスタも馬鹿ではない。しかも相手は仕事のゆういつの上司でもあり、普段友人のように接してくれるからと言って粗相が許される訳ではない。普段下世話な話を全くしない上司にムラッとするだとかその上綺麗で女の子らしいとなんか言ってみろ、どう考えても先にあるのは破滅だ。

「……僕が女の子みたいだとはよく言われます。髪も伸ばしたままだしね」
「…ハイ」
「それはこの際目をつむってもいい。だけど、ゲイだとか、そういうのはちょっといただけないな」
「あの、違…、俺が女の子好きなのはおめーも知ってんだろ!」
「僕は女の子に似ているんでしょう?」
「うぐぅ……ちが、」
「…別にゲイを差別するわけじゃないけれど、あまり良い思い出がなくてね。君がゲイだからと言って嫌ったりはしないけど」
「いや、ゲイじゃねぇし……」
「じゃあなんです、あなたらしくない」
「…………っ」

頭を振ってため息をつくジョルノを見ても、あなたを見てムラッとするから相談してましたなんてとても言う気にはなれない。ゲイの言いがかりも堪ったもんじゃないが、ジョルノに嫌な顔をされるよりはまだマシだった。誰だって同性に性対象に見られるのは少しでもいい気分はしない。比較的ゲイに言い寄られやすいミスタだからこそそれもよくわかる。だから言い訳も上手くないミスタは黙秘権を行使しようとしたのだが。

「……女の子に似てるとか言ってごめん、あとゲイじゃない!それしか言えない!」
「花京院さんに訊いても良いんですが」
「だっあそれダメ!ダメ!花京院にとっては訊くんじゃなくて脅しだから!」
「ミスタ」
「ゔう……」
「花京院さん逃げないで下さい、何もとって食べたりしませんよ」
「わかったから!ジョルノ!!」
「……最初から素直に吐けばいいんです」

相談にのってくれた花京院にまでとばっちりが行き、既に離れた場所で顔を青くしている彼に脅されてもらうわけにもいかずミスタは口を開かざるを得なかった。仲間になってぬるま湯につかっていたため忘れかけていたが、ジョルノは目的のためなら自らの腕ですら切り落とすことに容赦ない程に考えを曲げないのだ。ジョルノの前で収縮してしまう花京院を脅し半分に口を開かせることぐらい他愛もないだろう。そんな状態でグループの良心である花京院を守らずにいられるだろうか、否、そんなはずはない。ジョルノの前の魚は自分一人で十分なのだ。

「い、言うけど…さ、引くなよ……」
「僕が引くようなことなんですか」
「うぐぐ…、や、もう引くのは引いてくれて構わねぇや。……嫌いにならないでくれるか」
「すぐにはなりません。だから早く言って」
「…………っとしたんだ」
「はい?」
「お前に!ムラッとするの!性的に!!しかもしょっちゅうだ!ああクソ!」
「むらっと…え、ああ……、ああはい…」
「ホラ引いてる!!もうヤダ!!」
「引かないほうが無理あると思いますが」

仕方なしに本人に吐露すると呆気にとられたような顔をしてからまた不機嫌な顔をしてジョルノが言った。ミスタはもうこの場から逃げ出して手紙も書かずに誰もいないであろうロシア辺りに定住して隠れて静かに暮らしたい気分だった。自分でも常より顔が熱く感じて赤らんでいることが容易に予想できた。

「ホントごめん!!ジョルノぉ。嫌いにならないでくれ。そういうことしたいとか一切思ってねぇしよぉ……、ストレートなんだよ俺ェ」

一周回ってテンションが一気に落ちたミスタは顔を覆いながら言う。ミスタは見えていなかったが、遠くにいた花京院にはジョルノが仕方なさそうな顔をしているのが見えていた。ジョルノのため息にミスタは肩を震わしたが顔が上げられないのか下ばかり向いている。

「知ってますよ。嫌いにもなりません。……予想してた範疇ですし」
「予想してたって何!?俺すっげぇ悩んでたのに!」
「僕が金髪になってから特に学校でも女生徒がうるさかったし、そう、ゲイの人によくちょっかい出されたので。それにパードレに聞いた話からすると僕も同じような印象を人に与えるみたいですし」
「然り気無くモテる自慢かよ……てか、いや、なんだ最後の」
「パードレは人間の時から男女共に言い寄られ、吸血鬼になってからは笑いかけるだけで性別関係なく相手が踞って動けなくなったそうですよ」

ちなみに花京院さんはゲロ吐いたらしいですが、と言い足しながら途中から顔を上げたミスタにジョルノはポーカーフェイスで応える。吸血鬼の彼を相変わらず恐ろしい男だと思ったがその子であるジョルノもつまり今まさに色気成長中で、本人も自覚していたらしい。ふう、と息を吐くジョルノの睫毛は長く金色に煌めいている。普通の人間からはかけ離れた話にミスタは考えるのをやめそうだったが、ジョルノの話でもう一ヶ所突っ込みたかったので素直に口に出した。落ち込んでいた気分は既にどこかに行って無くなっていた。

「おめぇのパパはどうなってんだ……てかジョルノ、お前ゲイにちょっかいかけられてとか大丈夫だったのかよ」
「ええ。金髪になってからはGEがいたので。でもあの短い間に結構あったのでちょっと苦手ですね……手を出してこないって時点で君がどう思っていようが僕は気にしてないよ。多少ならね。フーゴも似たようなことを感じてはいるだろうし」
「えっ……あー、確かに……」

言われて思い返せばフーゴは確かにジョルノに笑いかけられるといちいち頬を赤くする。普段はギャンギャン騒いでてもジョルノが出てくと途端に大人しくなるし、ジョルノをもはや神か何かと言いたいぐらいになる尊敬と服従っぷりでその姿はずっとブチャラティに一心に従っていた時以上で異常さすらある。よくよく考えたらパッショーネの幹部もジョルノの若さに顔を赤くして御機嫌なこともあるし自分だけがこんな反応をしているわけではなかったのだ。気付いた事実にミスタの心は一気に軽くなっていく。

「俺ゲイじゃねえってことだよな!あ゙ーよかった!!」
「叫ばない」
「はァ〜い」

一方的に色々言われたジョルノはミスタの変わり具合がなんとなく腑に落ちなかったがいつも騒がしいミスタが落ち込んでいたのは落ち着かなかったため多目に見ることにした。早速女の子に会いに行ってくると言って行ってしまったミスタをジョルノと花京院は見送りながら、場の気まずさを動かない口に油を塗ってなんとか自然に別れジョルノは部屋を後にした。


後日、別の人物が周りの同性を捕まえては相談していて会場内ではちょっとした騒ぎになっていた。ミスタがエルメェスと話している途中盗み聞きをしたところ、ミスタが少し前まで悩んでいたことと似たような悩みらしい。あんなのがいたら仕方ないとミスタが勝手に思う中、既に相談を受けていた花京院はミスタ以上のもはやのろけのような話をそっとなかったことにするしか出来なかった。

「ねえ花京院くん。ちょっと相談があるんだけれど、君たちの時代のディオの色気ってどうなっているんだい?しかもやけにまとわりついてきて、赤くなった瞳で見上げてきてジョジョ、って呼ぶんだよ!僕はいつ理性が利かなくなるかハラハラしっぱなしだよ……!昔よりも伸びて無造作な髪も相変わらずはちみつ色だし、僕の体が自慢なのか露出は多いし、しゃべり方も余裕ができたのか落ち着いてるし……なんなんだいあの襲ってくださいと言っているような生き物は!!…………ごほん、とにかく、どうしたらいいかな。僕の良心はディオには無いようなものだし、一度何かが切れてしまったら僕は……」
「えぇ〜……っと、そのまま行ってしまえばいいんじゃないですか」
「ええ!何故みんな同じ返事をするんだい!?」




15.01.19




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