▼保護者戦争


※深く考えずに読んでください
 できてるDIOジョル、できてないジョルノ+ミスタ、承ジョル


100年ぶりの寝起きに色々やらかした吸血鬼はそれはこっぴどく殺されたものだが、吸血鬼になること自体には懲りなかった。というか基本的に反省はしても気分がハイになるとどうしても忘れっぽくなってしまう。そんなこんなで何回目かの吸血鬼生活を楽しんでいる吸血鬼にはもちろん世界で一番大きな団体、スピードワゴン財団の監視がついている。はずだったのだが最近、とある巨大化しつつある組織にその監視の権利が明け渡されたのである。その名もパッショーネ、イタリア語で情熱を意味する表向きは政治活動や様々な種類の店舗展開を行っている、少しお馬鹿な吸血鬼の息子が運営する組織だ。吐き気を催す邪悪から生まれたのは、星の輝きが混じらなかったにも関わらず黄金の精神を持つ天使だったのだ。息子はパッショーネを動かしながらも、吸血鬼の父親と館で仲睦まじく暮らしている。
そんな内容の手紙を読んで頭を抱えるのはスピードワゴン財団の輝ける星の一人、空条承太郎である。お馬鹿な吸血鬼、ディオと渡り合えるパワーに技を持ったスタンドを宿す彼の仕事は定期的にその奇抜な親子の様子を見に行くことである。ものすごく行きたくない。けれど悲しきかな財団の第一責任者はジョセフ・ジョースターであり一任されている以上行かない手はない。誰かの真似をするわけではなかったが、それこそ海に漂う星を見ながら静かに過ごしたいと思いながら空になった缶ビールを握り潰した。




「遠路はるばるお疲れさまです」
「本当にな……」

承太郎が空港について外に出ればジョルノ・ジョバァーナは既に車と見慣れた部下を連れて出迎えに来ていた。いつもの胸元があいた制服のような格好で上にコートを羽織っている姿はまだ大分かわいらしい。これが将来自分と殆ど変わらない大きさになるんだから子供の成長力は恐ろしいものだ。

「今日はミスタもお泊まりです。ふふ」
「仕事は片付いたのか」
「まあ粗方」

ミスタというこれまたド派手な色をした服を纏った青年が運転している後部席でぎこちなく間を持たせるために適当な話題を出す。コミュニケーションの面だけで言えば確実にジョルノの方が上手のため、相手が合わせてくれていることは少し情けないが昔から口下手なのでこればかりは仕方ない。禍々しい古びた館が見えてからたどり着くまで随分かかる。遠くからでも悪目立ちしているのがよくわかるが純日本人と感覚が違うのだと思う。思いたい。

「それ、右曲がったら空き地があるので適当に止めてください」
「へいへい」

ミスタが勢いよくカーブを決めてブレーキをかけ、反動でジョルノを潰しそうになった。こいつらの運転は総じて危ない。流石無免許。冷や汗をかきながらも車からおりて夕暮れ時の空を見上げる。そろそろ吸血鬼の活動時間であり、誰かが騒がしくなるのが容易に想像できて本当に頭を抱えたい。たとえそれを確認するのが仕事だったとしてもだ。

「帰りました」
「お〜じゃましますっと」
「……」
「……パードレ?」
「ンン…?ハルノか?よく帰った……なんだそれは」
「承太郎さんです。今日は泊まっていきます。あとミスタも」
「…………好きにすればいい」

スカートだかカーテンだかよくわからない布を体に巻き付けたまま出てきたディオは大きく欠伸をして承太郎を睨む。いちいち監視に来られて気分がいいはずはないだろうが微かな身長差のせいで意味を成していない。
寝起きで不機嫌のままジョルノを手招きして呼ぶと、素直に寄っていったジョルノを抱き締める。それから頬や額にキスの雨までは見慣れていたが慣れていても驚くしその行為をするディオには引いていた。親子愛と言ったって行きすぎではないかと。子供への愛がうまく伝えられない自分が言えたものではないが。とりあえず親子のお帰りの挨拶が済むまでロビーで立ち尽くしていると、眉を歪めたことがわかったのかディオがにぃと笑ってジョルノにキスをした。ジョルノの後ろから見ていたので頬かと思ったがバシバシとディオを叩く手が見える。

「……おい?」
「う、うわァ〜……熱烈ゥ」

ミスタが口元に手をそえてそわそわとしている。どう見てもそういった色事には敏感そうな若者だ、つまりそういうことなんだろう。ここは年長者として止めるべきだったのだろうがジョルノの上擦った声が聞こえてきて頭は考えるのを止めてしまったようだ。親子もそうだが、男同士だぞ、ミスタもそんな反応でいいのかキリシタンのくせに。これだから来たくなかったんだ。今でなくていい言い訳が脳を占める。

「ふ……ハァ、ハァッ…」
「ハルノ〜!」
「ちょっと…、後にしてくださいよこういうことは」
「いや、何してるんだテメーら」

ジョルノ自身の冷静だと思われる言葉を聞いて意識が地に足ついたように戻ってくる。ディオの勝手な行動に無駄無駄ラッシュくらいはおかしくないと思ったがどうやら息子の方も既に洗脳済みと言うか、おかしいというか。夜にごそごそやっている可能性は見なかったことにしたい。

「別に何だっていいじゃないですか。それとも興味がおありで?」
「ジョルノォそれ、つまり父親と……」
「ミスタ」
「……ハイ」

よくしつけられた犬はそれ以上意思表示をしなくなってしまって、取り残されたような気持ちで自分は正常だと繰り返す。これも全てディオのせいだ、そうに違いない。とすれは取る行動は決まっている。そう、オラオラだ。

「……ブチのめす」
「はい?」
「なんだ嫉妬か?」
「失せろ変態…、覚悟しやがれ」





大人の盛大な喧嘩が始まったためティーンの二人は先によろしくやっていた。今も屋敷の壁が吹き飛んだような音がしたがまあどうにかなるだろう。アルコールも入ってすっかり陽気になった二人は元々仲もよかったため兄弟のようにすら見えるくっつきようだ。

「オメーよ、さっきの話ほんと?」
「さっきのってどれです……」
「親父さんとのやつ」
「嘘ついてないですよ…あっちが求めてくるだけです。頭おかしいんですよあの人は」
「つまり、こういうことだよな…、付き合っちゃうお前もおかしいと思うけどナァ……」

指で下品に表現しても咎めようとしない程度にジョルノは夢心地だった。正直に言って貞操観念が薄いせいか人生が一度目でないせいか、そこまで気にすることないと思っているのだがミスタや承太郎は違うらしい。女なら妊娠の可能性がだとか、わからなくはないけど男ならそれこそ何の問題もないはずだ。敢えて言うなら血縁関係だけ見れば親子ということぐらいで、お互いに親子だという認識は薄い。道徳心や宗教もあったもんじゃない。

「二人してキレーな顔してるくせに頭良すぎておかしくなっちまったのかよ……それってゲイじゃん」
「別にゲイじゃないですよ。女性抱いてたでしょう」
「ビジネスでな」
「ふふ」
「このマセガキッ!わはは」

二人で肩を震わせておかしくふざけ合う瞬間が一番楽しいんじゃないかとジョルノは感じている。ミスタなら接触だって構わないと思うのだが、普通からネジの外れた自分が思うことなのでこれもゲイの気なのかとも思った。笑いでもつれて床に倒れ込んでも不快感はない。

「あー、おかしい」
「ミスタ重い」
「我が儘お姫様かよオメーはッ!吸血鬼のお姫様だもんな〜〜」
「ムカつくんでやめてください」
「確かにキレーだけど俺は無理だな、オメーに勃たない!おっぱいねーし」
「……飲みすぎだ、全く…」

ジョルノより強い分考えなしに飲むミスタは顔を真っ赤にしてジョルノに抱きつく。適当に構ってやり同室のベッドまで導いて靴だけを脱がせて、一緒にベッドに入り甲斐甲斐しく寝かしつけてやり、一息ついた所で部屋のドアが開いた。ベッドに座るジョルノを目を見開いて見るのは承太郎だった。タイミングの悪い男だ。

「ジョルノ……てめぇ」
「承太郎さん」

ベッドから下りて靴を履いているとずかずかと部屋に入ってきて、肩を痛いぐらいに掴んだ。力の加減ができていないのは珍しかった。

「自分を安くみるんじゃない」
「別に安くなんか見てませんよ」
「そいつは」
「アルコールが回ったので寝かしつけてました」
「…DIOとは」
「御察しの通りです」
「嫌じゃないのか」
「特には。嫌ならあんな化け物飼い続けませんよ」
「……それもそうだろうが…」

力が緩んだ手をそっと肩から引き離してベッドから立つ。未だに納得できないのか寄越してくる視線はまるで保護者だ。硬い表情筋のわりに根心は優しいことはよく知っている。

「そんなに心配しないでください。僕には矢もありますし……」
「だが……、何かあったらすぐ言え。はっ倒してやるあんなやつ」
「それ過保護ってやつじゃないですか?恥ずかしいですよ、もういい年なのに」
「君はまだ15だろう」
「もう15ですッ」

名も知らぬギャングといい、そっと見守られるのには慣れていないので気恥ずかしい。そう言うと恥ずかしがる場面が違うだろうと言われたがそんなもの人それぞれだと思う。

「前も思ったが…、自分を大事にしろ。周りに頼れ。一人ではないんだから」
「わかりましたって!本当に恥ずかしくなってきたのでやめてください……あなたは僕のなんなんだ。もう…」

こんなに羞恥を覚えたのは初めてかもしれない、そう思いながらアルコールも伴って赤いであろう顔を背ける。わざとらしくテーブルのビンを集めて台を拭いて見せると、早く寝なさい、とだけ言い残して部屋から出ていった。言い様のない安心感がどこから湧いているのかわからない。ミスタも寝入っているのをいいことにソファーに思いきり顔を押し当てて熱さを逃がした。

「……少し減らそうかな」

一人呟いてから考えるのをやめてもう一度ベッドに潜り込む。くっついて寝るにはミスタは熱すぎたので端に寄って目を閉じる。また盛大な音が聴こえたが熱さに浮かされて意識を落とすのにはなんの支障もなかった。





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