▼赤毛家族の朝





「あ、おはようアシュ兄」
「ん……」

ぼぉっとしながら一番に起きてくるのはアシュ兄だ。朝は低血圧なので、なるべく早く起きて外出までに頭を完全に覚まそうとしているらしい。姉のアシュリアのように立ったまま寝たりはしないが、目が据わっている。

「今日はちょっと起きるの遅かったから簡単にしか出来てないんだ…ごめん」
「別に、作ってくれてるだけで十分だ」
「そっか…はい、アシュ兄の分」
「ああ…」

もそもそ朝御飯を食べてる姿はちょっと可愛いかななんて思う。夜は可愛げなんてちっともないけども。むしろ鬼だ。

「ふぁ、眠い…」

欠伸をしながら次に降りてくるのはルー。なんだかんだ言って一番目は覚めていて、テーブルへ向かう足取りは確実だった。わかっている筈だからはだけたパジャマをどうにかして欲しい。

「おはようルー。はいご飯」
「おはよ、ありがとルーにぃ」
「顔洗って、パジャマちゃんとして」
「わかってるってばぁ」

短い髪を軽く結ってから、パジャマはそのままいただきますと言って白米に手をつける。もくもくと食べ始めたら終わるまで動かないから後でもう一度注意しようと思う。
さてさて、残りは起こしに行かなければ起きてこないので仕方なしに起こしに行こう。妹や弟はともかく姉に蹴り倒されないか不安だったが、それも仕方が無い。蹴られたら後で買い物に付き合ってもらうことにしよう。


「アシュ姉、起きて」
「………」
「アシュ姉ってば」
「……うっせぇ…」
「もう一回起こしに来るからその時には起きてね」
「……」

姉に声かけをしたのち、弟妹の部屋へ向かう。先に自室の隣の弟のところへ。

「ルファークぼっちゃんよ、ほら起きて」
「んあ…?もういらねぇって……ん…」
「何言ってんだ、今から朝御飯だよ」
「んん…飯…」
「はいおはよう。下行って」
「あ…、ルー兄」
「何?」
「おはようのちゅー」
「しない」
「…チッ」

朝から元気な弟を部屋から追い出し扉を閉める。おはようのちゅー自体は嫌いではないが、朝から調子に乗られると後々面倒臭いからだ。
お次はルーとの片割れルカのところへ。二人は双子のために大きめの部屋で、一緒に寝ているはずだが一緒にはどうも起きて来ない。ルーが良いとこ取りをしてしまったせいか、ルカはルーと比べ色々と世話を焼かなければいけない。そんなルカもルー同様に可愛いと思うのはシスコンと言うやつだろうか。この家でシスコンブラコン、などは言うまでもないと思うが。

「入るぞルカー。朝ですよー」
「ん………」
「はい起きて。布団剥がすよ」
「やだ眠い…」
「髪整える時間なくなるぞ」
「それはやだ…うぅ」
「よし、おはよう」
「おはよルーにぃ……」

ルカはこっくりこっくりしながらもしぶしぶと起き上がる。ルクと同じ髪質を持つルカは髪にコンプレックスを持っており、朝は必ずドライヤーみたいなもので整えている。だからいくら眠かろうがその時間が無くなるのは困るのだろう。起きた妹にきちんと下に行くよう言ってから、最後の砦の姉をもう一度起こしに行く。

「アシュ姉ー…起きてる?」
「………ん」
「よかった。じゃ起き上がって」
「連れてけ…」
「うえ…わかったよ」

姉妹の中では一番重…もとい健康的な体重の姉を抱えるのは少しきついが、ルークとて男なのだからそうは言えない。姉の伸ばす手を引いて正面から抱える。十数年前は立場が逆だったと思うと少し笑えた。

「ルー兄、それ寝てるんじゃないのか?」
「え、一回は起きたんだけど…」
「あひゅねぇおはよぉー」
「うぅぅ…るー…」

べしべしと肩を叩かれて姉を椅子の上に下ろすとそのままずるずるとルーの元へ行っておはようのちゅーをする。しばらくののちにちゅーは終わり、目元を擦りつつルカのいる洗面所へ。少しの格闘のちに静かになった洗面所から戻って来たのはすっかり覚醒した姉だった。

「おはよう」
「おはようアシュ姉〜」

いつものことなので皆がやっと起きたのか、と思っている中ルーだけが返事をする。そんなルーを思いきり抱き締めて撫でてとべったべたに甘やかす姉。きゃらきゃら笑うルーまでいつも通りなので誰もつっこみはしない。
そんなこんなで早く起きてきた順に朝御飯が済み、洗面所には姉とルカが、兄とルクとルーは着替えに自室へ。姉が洗面所から出てくると着替え終えたルクが入れ代わりで洗面所へ向かい、姉はルーを世話焼きながらも着替え、ルクが出てくると今度はルーが髪を整えに洗面所に。そして服を着てやっと目の醒めた兄が三人目として洗面所に行きルカに文句を言われながら髪を上げる。アシュ兄が整え終わる前にはルーが出てきてアシュ姉と共に出ていく。

「ルー兄いってきます〜」
「行ってくる」
「ん、いってらっしゃい二人とも」

何かと準備に時間のかかるルクが鞄を抱えてどたどたと階段を降りてきて、やっと外出の準備が整ったのか、そのまま行ってくる!と勢いよく飛び出した。いってら…、ぐらいでドアが閉まり多分俺の言葉は半分くらいしか聞こえてなかっただろう。
そろそろ自分も学校に行かないと、と思い洗面所を覗くときりっといつも通りなアシュとまだ髪をいじっているルカ。自分も少しだけ鏡を見てから二人に声をかけた。

「俺そろそろ出るけど?」
「俺ももう出る」
「うぅぅ俺もすこしやってるからルー兄達先に出てて!鍵はかけてくからっ」
「わかったよ」

毛先と格闘中の妹を見ると少し笑えるのは自分だけかと思いきやアシュ兄も少し笑っていたので微笑ましいのは一緒なんだなぁと思った。そうこうしているといつも乗っている電車に遅れそうだったので、学ランを羽織ってスポーツバッグをひっさげて残りは兄に託す。

「いってきます」
「ああ」
「ルー兄いってらっ」

ひょこと洗面所から顔を出して挨拶した妹を笑いながら玄関を開ける。今日も朝から騒がしくも面白くて、一日分のパワーになる。自分も相当なシスコンブラコンだな、と思いつつ少し駆け足で駅を目指した。





13.12.13




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