▼72.闇の底




※ガイ(←)アシュ
 暴力表現および首締めあり


「慣れてるんだな」

開いた胸元に指を這わすと日に焼けていない白い素肌がびくりと震える。それを見てガイは愉快そうに喉を鳴らした。アッシュは既に口内を荒らされた感覚で腰が抜けており、もたつくことしか抵抗の術がないと思われた。それは、ガイにとっては抵抗の内に入らなかった。

「ちが、う、やめろ」
「なら抵抗もっとしてみせろよ」

しても止めるわけないけどな、とガイは心の中で呟く。それを知るよしもなくアッシュは腰を引く。覆い被さっているガイは逃げる腰を掴み腿を撫でた。さらに硬直するアッシュを無視してタイツに手をかけて、乱暴に引き下ろした。膝まで適当に引いたタイツと下着との間の肌が下心を煽った。

「っ、ガイ!」

本格的に暴れて自分を蹴り落とそうとする足に体重をかけて動けないようにする。身動きが取れないとわかっていながらも抵抗しようとする姿勢に、気が長くも短くもないガイは少し苛立ちを感じアッシュの頭に拳を振りかざした。甲は右頬へクリーンヒットし、それはアッシュに軽い脳震盪を起こさせ動きを止めるには十分過ぎた。

「う…」
「…いい様だな」
「最初、から…こうするつもりだったんだろ…」
「こう?」
「……」

どれを指しているのかわからなかった。既に色々やらかしたからだ。動かなくなったアッシュに抵抗しないのはつまらないと思いつつも胸辺りに手を這わそうと腕を伸ばすと、ベッドに投げられたままだった手が腕を掴み、そのまま引かれて思いきり頭突きを食らった。眩む視界で正面に捉えた顔はやってやったと言う表情だった。

「…っ!?」

ベッドと俺の板挟みを横から抜けようとする腕を今度はこちらが掴んでやり、力もそこそこに空いた手で顔面めがけて奮った。腕を掴んだままの手に爪を立てられていたが、呆気なく上体はベッドの上へと戻った。

「鼻血出ちまったな」

口へ頬へと流れる血を少し拭ってやり舐めると鉄の味がした。それが余計に、どうしようもないどす黒い感情をかき混ぜた。血を拭うガイの手をはね除けて、アッシュはグローブで血を擦り拭く。

「さわんじゃねぇ…」
「無理なお願いだな」
「気が狂いでもしたか」
「俺は正気さ。お前だって俺がお前を憎んでいるのを知っているくせにそんなことを言うのか?」
「……」
「俺が好きだったくせに」
「…っ違う!」
「本当は今だって。俺に触れてもらえて揺らいでるんだろう?なぁ…アッシュ」

血を流しながらも鋭い目線を向けていた瞳がうろつく。そんな様子を見てガイはまた笑う。何か言おうとする口を見ていると視界に無防備な首が晒されており、そっと両手を添えた。

「…ガイ…」
「……殺してやりたいよ。でもお前じゃないとルークの代わりがいないしな」
「ぁ…」

ぐっと力を込めて首を押さえつけると喉仏が指の間で出っぱる。みるみるうちにアッシュが眉を潜めて顔を赤くしてもがいた。ひゅ、やらぐ、とやら、気管をなけなしの空気が通る音が響き、シーツを掴もうと必死にアッシュは手を蠢かす。そこに抵抗する姿はなかった。やがてアッシュは酸欠から自然と涙を溢し、シーツを掴んだまま軽く痙攣し始めた。滲んだ世界でガイのたまらなく嬉しそうな顔を見てこのまま締め殺されるのもいいかとおもってしまった。が、急に圧迫を解かれ一気に出来るようになった呼吸に散々に噎せ、苦しんだ体の実感を得る。がくがくと震え勢いで涙が出た。

「っあ、ぁ…、は、」
「…いいザマだな。ゾクゾクするよ」
「っふ、はぁ…っ!この、サド…っ」
「仇の息子だもんな、サディストにもなるさ」
「…大人しくしてろよ。ルークの代わりはお前にしか出来ないんだから」

そういって無抵抗な体に手を這わした。昔ルークを風呂に入れた時や、今ふと撫でる時と変わらない肌の質に表情が弛むのを止められない。少しくすんだ胸の先やより締まった腹筋がゆういつの違いだった。腹筋の間のへこみから下をゆるゆるとやらしく撫でると時折びくりとして震えるのももはや面白い。そのまま下腹部に手を触れて顔が強張った瞬間はぜひとも写真に残して弱味にしてやりたいものだった。

「まだまだ夜は長いからな…」

残酷にも復讐者は言った。






13.12.07




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