▼ルークinマイソロ2 2




また寝入っていたようだ。外が見えないから時間がどれくらい経ったのかわからないが、体の感じからしてぐっすり寝るには相応しくない時間だと感じた。

「何時なんだろ」

頭痛も感じない程ましになったので、そろそろと起き上がる。タルタロスなどの医務室は見たことがないため比べようが無いが、そこは十分立派だった。
空腹を感じ、食べるものがないかと思い扉の先へ行くことを決心する。診察台から降りて、扉の前に立つと自動的に開いた。そしてその先には見慣れた格好の仲間、−−否、ここでの船員がいた。金髪にオレンジのベスト、黒のスパッツだかズボンだか……

「が、ガイ…?」
「おっ、ようやくお出ましか」
「えっと、は、じめまして…俺、ルークって言います」
「ああいいって。旦那から全部聞いてるしな。パラレルワールドのルークなんだって?こっちでのルークとそっくりだ」
「あ…」

ガイの言葉を聞いて、ここにいる"ルーク"は髪を切った後の自分の性格なんだと安心した。アクゼリュスの件がなければ、自分みたいに卑屈でもないのではないか、とも思った。

「あー、先に呼ばれたから忘れてた。知ってるみたいだが、俺はガイ。ガイ・セシルだ。君の世界ではどうだか知らないが、ここではルークの使用人をしているよ。よろしく」
「お、おう…」
「無理しなくていいからな。ルークも敬語とか苦手なんだ。気軽にガイって呼んでくれよ。じゃないと俺もルークの声で"ガイさん"なんて呼ばれたらびびっちまう」
「わかった…ありがとうな、ガイ」
「ん」

ここに来て初めて笑った気がする。やっぱりどこでもガイは俺の親友をやってるんだなと感じた。やっと笑ったななんて撫でてくるガイとじゃれてると、盛大に腹の虫がないた。思わず顔をそらすと、ガイは少し笑ってから「とりあえず飯にしようか」と言った。





「たくさん食べてちょうだいね。ルークさんが好きなものを入れたのだけれど、こちらのルークさんはどうかしら」

パタパタと羽を使って飛びながらパニールが言った。ナツナッツ属と言われたが当然見たことがない。ミュウ並みの小さな生き物は皆高音で喋るのだなとルークは感じた。

「ん、これ、エビグラタンか…!」
「こっちのルークもエビ好きか。趣向も一緒なんだな」
「そういうガイは魚介類が好物なんだろ?散々魚食えって煩かったもんなぁ」
「御名答!魚嫌い、ねぇ」
「レモンと豆腐だっけか」
「そんな事まで知ってるのか」

少し驚きながらガイが言う。ルーク専属使用人のガイはルークの好き嫌いは知っているが自分の嫌いなものは言う必要が無かったために言っていなかったのだ。ルークより年上なのもあって、嫌いな豆腐が出ようと何事も無いように手袋の中で冷や汗をかきながら食べていたのだ。 そこで、ガイは彼と彼の世界の自分がどういう関係か気になった。呼び掛けられ方や、撫でた時の抵抗の無さから似たような関係だと推測していたが事実はいかがか。声を掛けようとふとルークを見ると、既にグラタンはなくなりかけていた。

「なぁ、訊いてもいいかい?」
「ん?なんだよガイ」
「君の世界での君と俺の関係はどうだったんだ?」
「俺の世界での俺とガイ…、…うん、こっちとあんまり変わらねぇよ。俺の使用人で、一番の親友だ。いや、今は使用人じゃないのか…うん、でも親友なんだ」
「そうか…」
「ガイは俺が赤ん坊の頃から育ててたから、母親みたいなものかもな。ははっ」
「赤ん坊?というか母親ってな…せめて父親にしてくれよ」
「いーや母親だね。魚食え人参残すな、ちゃんと髪洗えてるか乾かしてるかアッシュと喧嘩はしてないかってうるせーし」
「アッシュもいるのか…」
「いるよ。ってかこっちだと敵なのか?アッシュとは戦いたくないな…」

ふとスプーンを止めて思い出すような口調になるルーク。その瞳は伺えないが、眉が辛そうに寄せられたのを見てあまり良い話ではないのだなと思った。

「まぁまぁ。アッシュはとりあえずは敵じゃ無いから安心しろって。詳しくは会ってからだな」
「そっか…うん、わかった」
「そろそろ動こうぜ」
「おう!」

空になった皿を二枚パニールに渡し、きちんと御馳走様も言った後にガイがまず向かったのは科学部屋だった。途中すれ違った人達が、ルークを珍しげに見たりドッペルだと騒いだりした。

「悪いな。まだ船の全員には話が回ってないみたいだ」
「ガイが謝る必要ねぇって。実際余所者なんだし」

すっかり最初からそうだったかのように会話を交わす二人。ホールから廊下へ行く際に、小柄な少女がかけてきて合流した。そうして科学部屋には総勢7人になった。




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