▼13.好きなんて言葉じゃ足りないくらい



※ED後
 ガイルクアシュ
 ほぼ会話文




好き好き大好き!


還ってきてから早半年。追われるような公務の山に休む暇なく働き続けたアッシュにようやくの休日ができた。もう少し早く終わるはずだったのだが、ルークができる事が非常に少なく、その全てはアッシュに回ってきた。ルークの暇は早めに出来たが、その分アッシュが苦労する羽目になったのだ。どうして自分のレプリカなのにこうも役に立たないのかと苛立ちを覚えたのは大分昔で、もう役立たずとして認識することにしたのだった。
体を休める事も含めて久しぶりにアッシュは本を読んだ。元々本を読むのが好きなアッシュは、ブレイクの間に知らぬ本が発売していたのを知り、暇ができるまでと沢山ためていたのだ。ルークはナタリアのところへ行っているし、静かで、絶好の読書日和だ。



「……、っ」

痛い。乾燥しているのに気付かずに親指を本で切った。無意識に舐めた。

「大丈夫?アッシュ」
「………いつの間に…」
「俺が舐めたげようか?」
「いらん」

いつの間にかレプリカが王宮から戻ってきていた。ふと時計を見ればそれなりに時間が経っているのに気付き、自分はこんな歳なのに本に夢中になっていたのかと少し恥じる。横でルークはにっこりと笑う。

「久しぶりに楽しそうなアッシュみた」
「そうか」
「ん。アッシュ笑ってた。その本面白い?」
「…んなわけあるか」
「そう?」

んー、とローレライの野郎の顔しながら頬にキスしてくるルーク。もう慣れたが、愛情表現と言われると少しもどかしい。何と言うか、兄弟みたいな。

「唾液つけんじゃねーよ」
「つけなければしてい?」
「…好きにしろ」
「わぁい」

ちゅっと音をたてている辺りやはり唾液はついてるに違いない。どうもこいつはガイのせいでキスが好きらしい。(そうガイから聞いた)簡単に好きだと伝えられていいんだとか。俺からしたらただ唇押し付けて何が楽しいんだ、ぐらいで。少し温かくなるとかは絶対に言ってやらねぇ。

「俺さ、アッシュ好きだよ」
「てめぇにはガイがいんだろ」
「ガイには愛されていたいんだ。アッシュは愛したい。アッシュかわいいし。わかる?」
「…お前は変だ」
「そう?」
「ホモが」
「えぇー!アッシュだってガイ好きだろ?」
「……それは別だ」
「一緒だって。俺がガイ好きなのも、アッシュ好きなのも、アッシュがガイ好きなのも。みんな、すごいすごい好きだろ?…一緒だよ。」
「お前が悟ったような口きくな。まだ10年も生きてないお前が」
「まぁ、そうだね」

ケタケタ笑い出したルークに、手がつけられなくなる。俺なんかより知識は少ないはずなのに、情緒豊かで、どうもかみ合わない。今のやり取りのどこが面白かったのかも俺にはわからない。ルークに言われたことだって、俺にはよくわからない。実は俺の方がわからないことが多いのではないかと錯覚する。

「ひー笑った笑った。あーおもしろい」
「……?」
「あれ、アッシュ。恥ずかしくなった?」
「何がだ」
「だってさ、アッシュあれ嫉妬?と言うかさ、何と言うか、わかってないみたいで。アッシュは物事固く考え過ぎなんだよ」
「嫉妬?俺がいつした」
「うーん、嫉妬じゃなくて、なんだろ。道具は揃ってるのにかみ合わなくて困ってる感じかな。俺がアッシュやガイ好きってことと、アッシュがガイを好きってことと、俺がまだ10年も生きてないってこと、かな?」
「? よくわからん」
「うーん。俺もこんがらがってきた。えっと、つまり、俺がまだ少ししか生きてないから皆に偏見が無くて、だから皆好きで、アッシュも精神年齢は幼いから、感覚は俺と一緒で、でも知識と警戒心があるからうまく纏まらなくてよくわかってない!かな?説明する方がわかんねー」

またケタケタ笑い出すルークを見ながら俺は固まることしかできなかった。まさかルークにそこまで見透かされてると思わなかったから。長く一緒にいた兄弟でもないのに。しかも、自分で理解できなかった謎の感情を言い当てられて、図星で。表現するなら愛情、だろうか。…じわじわと恥ずかしくなってくる単語だ。

「〜〜〜っ!このっ…ば、馬鹿レプリカ!!くたばっちまえ!」
「あ、伝わった?やっぱりアッシュは深く考えすぎなんだよ」
「うるせぇっ!」
「にしてもまた久しぶりにレプリカって聞いたなぁ〜」

懐かしいなぁなんてほざくレプリカ。バシバシルークの頭を叩いたら「照れなくてもいいって〜」とか聞こえてきて一発蹴り入れてやったら静かになった。…やり過ぎたか?

「………お、おい…大丈…」
「あ、心配してくれた?」
「っ誰が!……エクスプロード!死ねっ!」
「ひ、ひどいぃ…」

文字通りくたばるレプリカ。ざまあみろだ。こんなやつに心見透かされるなんてごめんだからな。懲りずに「アッシュ好き」だなんて言ってくるルークにもう一度蹴りを入れてやって、久々に清々とした。





12.03.31





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