▼confidence4 3ヶ月後



※視点ころころ変わる
3ヶ月後



今日はなぜかガイのやしきのみんながバタバタしていた。いつもなら好きなだけねかせてくれるのに今日は起こされた。どうしてだろう。

「来客だ。大人しくしていればいい。出回るなよ」

わからないことはアッシュが教えてくれる。へぇ。ところでらいきゃくってなんだろう。それよりもおれはおなかがペコペコで、朝ごはんが食べたい。

「はらへったー」
「お前が起きるのがおそいから食べそこなうんだ屑」
「えー!いつもなら今からごはんなのに…」
「それはお前だけなんだよ!」

アッシュってばイライラしてる。いっつもきげん悪そうだけど今日はいっそうよくないみたい。そーゆーの、アッシュが言わなくてもわかるんだよね。たいどもいつもよりひどいし。






今日のガルディオス邸は久々の来客に忙しく騒ぎ立てていた。それも、隠さなければいけないものがあるからだが。来客者はなにせ陛下の足でもあるから情報の伝わりが早い。それは困る。

「ガイラルディア様!カーティス大佐がもうお見えになられてます!」
「悪いがもう少し待たせておいてくれ!」
「了解しました!」

バタバタと走り回る使用人達。その間にガイラルディアは、双子がいる部屋に色々放り投げ入れる、それから、双子になにかを言ってから来客を迎えた。大分汗をかいていた。
来客者-----ジェイド・カーティスは、マルクトでも有名な科学者だ。そして、ピオニー陛下のお気に入りとしても有名だ。そんなジェイドはガイを少しながらも仲良い友だと思ってくれているのか、時々こうして訪問しに来るのだ。もっとも、今はタイミングが悪すぎるが。

「ガーイ?」
「うわっ!!ジェイド…」
「珍しいですね。貴方がぎりぎりまで慌ただしいのは」
「いや…なんでもない。すまない、出迎えられなくて。今日は何の用だ?」
「遊びにきました」
「おい…」

いつもこの調子だ。ジェイドがわざわざ訪問にくるときは用件が付き物だ。

「いやー陛下の人の扱いが酷くて酷くて…逃げてきました☆」
「相変わらずだなー…。で、用件は?」
「切り替え早いですねー。もう少し付き合ってくれてもいいじゃないですか」
「や、ちょっと待たせてるのがいるんだ。早めに頼む」
「…そうですか。それは残念」

一つ目は少し前にあったマルクト貴族がいなくなるという事件の経過報告。二つ目は、二人にねだられて欠席したパーティーの内容。二つとも正直どうでもよかった。早くルークに飯を食わせてやりたい。適当に相槌を打っていると、ジェイドはそれに気付いて俺を小突いた。

「きちんと聞いていなさい。二回目は言いませんよー」
「あ…悪い悪い。そんだけ?」
「まぁ、とりあえずは。あと、今度のパーティーには出席するようにと、ピオニー陛下からの勅命です」
「あの陛下は本当にそういう事ばっか考えてんのな……ま、行けたら行きますとでも言っといてくれよ」
「何故です?」
「あー…その、…だから、」

「ガイー!!」
「おいっ…なんでこんな時だけ速く走るばか!」

適当な理由をつけて休もうと吃っていると、本当の理由の元が走り寄ってきた。勝手に部屋を飛び出してきたのだろう。まだ寝巻きのルークと、きちんと着替えているアッシュ。二人のなびかせている赤い髪なんか印象的だろう、きっちりとジェイドの目に入ってしまった。俺の少しの努力が無駄に…。

「……ガーイ。この子らは?」
「…?お前…だれだよ。そこのメガネ」

アッシュが早くにジェイドを見据え首を傾げる。ルークは既に俺の胸にぐりぐりと頭を押し付けてスキンシップ。寝起きなのがかわいいが今はそんな親(?)バカを言っている場合ではない。

「あーもう…バレたら仕方ないな」

出来れば拾ったかわいらしい赤毛など、秘密にしておきたかった、いや、拾ったなんて公になれば困るし、隠しておきたかったのだがもう仕方ないとしかいいようがない。
約3ヶ月に拾ったことだとか、元気なのがルーク、大人しいのがアッシュとか、二人から聞いた限りを話した。どうせ隠したってジェイドは聞き出すのが得意だから自分から喋ったほうが安全だ。長身の俺達が話してる間ルークはずっと俺達の間をうろうろしていた。見知らぬ誰かが珍しいのと、少し怖いのと、あったんだろう。アッシュは後ろで俺の服の裾を掴んでじっとジェイドを見上げていた。


「ふむ、ではこの二人はどこの子かわかってないわけですね」
「ん?あぁ…まぁそういうことになるな」
「では危険ですね。見知らぬモノを拾ってはならないとお姉様から教わらなかったのですか?」
「教わったわ!…、悪い。とりあえず、この子らが危ないとかそんなことあるはずないだろ?拾ったときはすごく痩せてて、可哀相だったし…」
「…ガイ。貴方は可哀相だったら野良猫でも、魔物でも飼うと言うのですか?」
「…それとこいつらは違うだろ。第一に人間だ」

ガイの声が少し真面目になるのを聞いて、アッシュは少し嬉しくなって見知らぬ誰かを見るのをやめて、目の前のガイのシャツに顔を埋めた。

「…まぁいいです。後はこの子達に聞きます。保護者のつもりのようですが何も知らないみたいなので」
「……おい」
「はい?」
「…おれ達が喋ってないだけだ。ガイを…こう、悪く言うな」
「おや…懐かれてますねぇ、ガイ」

顔を埋めていたアッシュはきっとジェイドを睨んで言った。ジェイドには自分を怖がっているように見えていて小動物のようだと思った。

「貴方が、アッシュですね?」
「…人に聞く前に名乗りやがれ」
「おやおや。申し遅れました、マルクト軍のジェイドと言います。以後お見知りおきを。」

小さなアッシュに向かってジェイドは一礼する。

「…アッシュだ。ガイに世話になってる」
「なに?自己しょーかい?おれルーク!朝めし食べてなかったからガイさがしてたの」
「余計なことは言わんでいい!屑!」
「今日きげん悪いよねアッシュ」
「うるさい!こんの、ばかが!」

べしべしとルークを叩いてガイの横に出てきたアッシュ。ジェイドに対して警戒はしているが怯えてはいない。小さいだけで年は少年ぐらいなのだろうか、とジェイドは推測する。並ぶ二人は髪の分け目と色以外はつくりが同じだった。

「…双子ですか?よく似てますね〜」
「…そうだ。用がすんだならさっさと帰りやがれ眼鏡」
「名前ぐらい覚えてくださいよ。これから会う機会が増える訳ですし」
「ジェイドだろ?ジェイドもおっきいな!おれもそれぐらいおっきくなると思うか?」
「あなた方がいくつか存じあげませんが、まだ成長の予知はあると思いますよ。」
「やった!よかったなアッシュう、まだ大きくなるって」
「まだ成長期来てないんだからとうぜんだろうが屑め」
「また屑って言ったー!」

朝ごはんを食べていなくて機嫌が悪くなりやすいルークが、久々に怒りだしてぽかぽかアッシュに攻撃を始めた。アッシュはくるりとガイを盾に逃げた。ルークが頬を膨らましていると、ピンとジェイドがルークの髪を掴みびっくりしてルークは後ろに転がった。

「!!?なに!?」
「私ですよルーク」
「ジェイド?」
「どうも貴方はアッシュよりおつむが弱いみたいですね〜」
「おつむ…?おむつか?」
「双子にしては精神年齢が離れてますね」
「?」

よくわからない話にひたすらクエスチョンマークを浮かべるルーク。ちらりとジェイドがアッシュを見れば、何が言いたいと言わんばかりの視線とかちあった。

「……まぁ、気のせいですかね。あぁそういえば、朝食がまだだったんですね。どうもお邪魔しました。ガーイ、ちゃんとこの子達の面倒見ていてくださいね?二人のことは黙っていてあげますから」
「え?それはありがたいが…どうしたジェイド?」
「できればもう少し理解し合ってくださるとありがたいですね。警戒心が強いようなので。それでは。」
「? ああ…またなジェイド…」
「…ふん」

ぷいと横を向いて鼻をならしたアッシュは、どうもジェイドが気にいらないらしい。ガイからはそう見て取れた。まだ本心を見抜けるほど長く一緒にいるわけではないが。



「ガイ?」
「っああ、悪い。なんでもないぞ。そうだ、朝飯食うかルーク!」
「うん!」
「……いや、まさかな…」
「どしたの?アッシュ」
「なんでもない。…お前そろそろトイレ行け」
「あっそうだった!漏れちまうー!」

一目散に来た道を戻るルーク。ひらひらとネグリジェがめくれて尻が丸見えなのを見て思わず笑ってしまった。

「…お前ほんとにいい兄ちゃんだなぁ」
「っ、そんなことない!あいつが馬鹿なんだ…俺がいないと、なんにもできねぇんだ。時間もわかんねーし…、知らない奴を警戒しないし、だから俺が面倒みてやんないと…」

やけに自分に負担をかけようとするアッシュ。双子の割に知識がアッシュに偏り過ぎていた。もう一緒にいて3ヶ月にもなるのに、俺を保護者のように慕ってくれる様子はない。いや、まだ3ヶ月、か。

「…俺は頼れないか?今は…、俺がいるんだ。小さいお前らだけじゃないんだ。」
「え………」
「俺は大人だからお前達を守ってやれるし、養ってやれる。だから、もう少し俺を頼ってくれよ。何もかも抱え込まないでさ」
「……、でも、おとなは狡いんだ。結局は、馬鹿にしてすてるんだ。いくらガイでも…、すぐには頼れない。頼ってしまったら、無くなったとき大変だから」
「じゃあ、どれだけ待てばいい?どれくらい時間が経てば、信じてくれるか?」

トイレに行って戻ってきたルークがまた頭にクエスチョンマークを浮かべている。グーに握られたアッシュの手をそっとルークは上から握った。珍しくルークがアッシュを慰めるような形だった。

「…一年、俺達が来てから一年経ったら」
「経ったら…?」
「……もう少し詳しくおれ達のことを教える。おいルーク」
「なに?」
「それまで何も言うなよ」
「? うん。わかった。いちねんね」
「少しだからな。それ以上は…、今まで一番長い奴より長くおいてくれなかったら話さない。」
「…わかったよ。待つよ。俺はお前達を捨てたりなんかしないから。何年でも、本当のことを喋ってくれるのを待つよ。お前達のこと、まだちょっとしかわかんないからな」
「……飯食わせてやれ。」
「え?…あ、ああ」
「やった!やっと朝めし!」

ガルディオス家の朝はまだまだ始まったばかり。







「一年…本当に待っていてくれるのかな」
「とちゅうですてたりしないかな」
「心配だな」
「そうだね。でも…」
「でも?」
「ガイなら、まっててくれると思うんだ」
「……そうだといいけど」




12.03.25





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