▼03:あなたはいつも、そう言うけれど…



「…師匠、」
「どうした?」
「いつになったら、こんなこと、やめて、外に出してくれるんですか」
「ああ…」





「外に出たいのか」
「…かえりたい」
「言っただろう。屋敷にはもうレプリカがいてお前の帰る場所を取ってしまった。お前に帰るところなんて無いんだ、アッシュ」
「おれ、は、ルークです。アッシュじゃない…。かえりたい……」

長い監禁と繰り返される酷い扱いに10歳の割に強かった精神も打ちのめされて、ただただ迷子の子供のように゙かえりたい゙とぼやくようになった。その度に私は相槌をうって慰めてやるのだが、なかなかうまくいかない。我が強いから泣くわけでもないが、視点はうつろだ。撫でてやっても昔みたいに喜ぶそぶりすら見せない。

「まったく…、あまり可愛くなくなったな。…アッシュ」
「……父上…、母上……ナタリア…ガ、ィ…」
「アッシュ」
「………」

目だけこちらにやって応答する様子はない。どうせ毎回同じことを言っているからまともに聞く気もないんだろう。緑の目に光は無い。

「私はお前のことを思って、あそこから連れ出したのだ。お前を預言通り殺すわけにはいかない。私にはお前が必要だからな」
「……でも」
「お前だっで死にたくない゙、そう言っただろう?」
「…でも、どうしてそれが閉じ込めて性行為を強いることに繋がるんですか」
「お前が周りに知られるといけないんだ。それに、世間を知ることも必要だからな」
「………」

再び目を伏せて自分を守るように丸まってしまった幼い紅。そろそろ大詠師が呼びにくる頃だろうから宥めるつもりで紅を撫でた。相変わらず反応は無い。

「…また来る」

ギィィ…

檻の錆びた音が響いた。



「あなたはいつも、そう言うけれど…、俺のことなんてちっぽけも思ってない」
あなたの考えていることは、いかに俺を利用できるか、ですよね。俺の思いなんて、考えたこともないですよね。
独り幼い声がそう言った。



12.03.12





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