▼酔って酔わされて



※ED後赤毛帰還
 キャラ崩壊



「まさか弱いとは思ってなかったけどなぁ…、大丈夫か?」

ほぅと頬を赤くして目を据わらせているルークオリジナルを見る。いつもの彼はどこへ行ったのか、ルークレプリカだった彼をぼーっと見つめていた。

二人はつい最近、この世界に還ってきたのである。成人の儀も終わった夜に、渓谷から。その報告を聞いてオールドラント中の人々は沸き上がった。それをわかっていたかのように、二人の英雄の帰還と、成人の祝いを兼ねてファブレ公爵はもう一度パーティーを開き直したのだ。一般の者も入れる、貴族限りでないパーティーを。パーティーには沢山の貴族と、さまざまな地方から二人の生還を喜ぶ市民で溢れた。
そこで、赤毛の二人は成人した祝いに、貴族や市民とシャンパンや、ワインを飲み交わしたのである。初めて飲むものに二人は興味津々で、節度なんか知らずに誘われるままにグラスを交わした。
先に変化が現れたのはアッシュのほうだった。表情や顔色は変わらないのに、空のグラスを持ったまま棒立ちしはじめた。ガイはそれを遠くから見ていた。アッシュは、貴族の女の誘われカチリとグラスを合わせてまたワインを煽った。貴族の女が何かを喋っていたが、アッシュにそれを聞いている様子はなく、ゆらゆら微かに揺れていた。何をしているんだろうと思い眺めていると、ルークがひょこと現れてアッシュにダイブした。さすがにそれには驚いてルークを引き離そうと近くまで行ったが、アッシュはそのまま起きる様子がなかった。

『アッシュ?アッシュー?おれ、さびしかったんだぞー?』
『……くず、おもい』
『くずかー。懐かしいなぁ』

ついには貴族の女の前でルークはぎゅうとアッシュに抱き着いた。すぐにわかった。ルークは酔っているのだ。でもそれを引きはがさないアッシュは?

『アッシュ…立てるか?』
『がい!えへぇ…お前もひさしぶり』
『久しぶりルーク。よく還ってきた。でも今はアッシュの上からどきなさい。まだパーティー中だぞ?』
『なんかおれ、ぽーっとしてね!しあわせ!あっしゅーっ』
『おも、い…』
『ほら。立てるか?』
『ばかにするな…ぁ…』

ふらふらと立ち上がってぼーっと一点を見出すアッシュ。俺はここでやっとアッシュが酔っているのだと気付いた。
そして今に至る。二人とも人と普通に接せる状態ではなかったから、ファブレ公爵に事情を話して、二人を部屋に戻らせることを了承して貰った。ヨロヨロの足の二人を自室まで誘導し、服を少し緩めてやって、今は様子見だ。ルークは一人でけたけた笑っていて、アッシュはひたすら床を見つめていた。ルークは笑い上戸なのだとわかったが、アッシュはどうなんだろうか。笑い上戸でも想像しがたいし、ましてや泣き上戸など、いやありえないだろう。酔った人間は聞き分けのない子供と同じだと知っているから、二人を適当に落ち着かせて寝かせるのが一番だと俺は考えた。

「アッシュ、ルークもご機嫌のところ悪いが、とりあえず礼服は脱げ。よれよれにしちまったら駄目だろ?」
「れいふくー?」
「今着てるヤツだよ」
「わかった!くるしいもんなこれー」

フック外れないだの言いながら笑ってるルークを目の端に、一向に動こうとしないアッシュに語りかける。こんな雰囲気だとルークに似てる。

「アッシュも、服脱げよ」
「…ぬぐ?…なんで」
「お前らもう持たないから寝るだろ?よれよれにしちまったらあれだからな」
「…やだぁ」
「やだってなぁ…」

アッシュが我が儘を言うなんて初めてだった。゙ルーグだったころもまともに我が儘を言ったことなんてなかったのに。アルコール様々だ。

「ほーら、眠いだろ?ちゃっちゃと脱いじまえ」
「や、だ…。がい…」
「…お前が駄々をこねる姿なんてそうそう見れたもんじゃないけど、こりゃまためんどくさい…」
「がいー!ぬいだ!」
「おっま馬鹿下着まで脱ぐなよ?ほらパンツは履け」
「うわっみるなよヘンタイ!」
「どこで覚えたそんな言葉!?」

なんだかんだ言って二人ともネジが外れてる。ルークに関しては幼児返りをおこしている気もしてさすがに頭を抱えたくなった。アッシュは俺の服の端っこ必死に掴んで引っ張ってるし。

「がぁい…」
「…はぁ。なんですかアッシュ様?」
「おれ、はぬがない…。がいがぬがせ…がい」

かなり意識が薄れているのだろうか。滑舌が酷くてこちらのルークまで幼児返りしてしまったみたいだ。そう思わないと俺の頭はいつもの彼と噛み合わなくてパンクしてしまいそうだった。

「う…」
「わかりましたわかりました。脱がしてあげますからこっち向いてください」
「いや、だ…」

こいつはもう駄目だな。酒を飲んでハメを外して幼児返りしている子供。これもこいつの一部。そう割り切って諦めてやだやだと駄々っ子になってしまったアッシュの服を脱がす。静かになっていて気がついたがルークはパンツをはいて床で寝ていた。とりあえずベッドの上に移動させて、寒そうな格好に毛布をかけてやった。夜もそれなりで、俺も飲んでいたから服を着せてやるのは億劫だった。アッシュはアッシュで自分でクローゼットからローブを引っ張り出しておもいっきり俺に放り投げてきた。着せろってことですかアッシュ様。

「はいはい。手伸ばして腕通してくださーい。」
「や、だ…がいぃ…」
「…とことん面倒臭いなお前は」

結局アッシュもインナー姿でベッドの中に収まってしまった。二人揃って風邪でも引いたら俺のせいだなこりゃ。らしくなく頬赤く染めて、眉をひそめることなく眠る姿はこいつらがオリジナルとレプリカだと言うのも納得できる表情だった。
ローブは仕方なくたたんでアッシュのベッド元に置いた。そして二人を守るようにドアに背を預け俺もそこで寝入った。




「…?朝か…さむい…って、服…」
「うーん…、アッシュ、起きたか…」
「……ふ、おはよ…っ!わ、わ」

怠そうにゆっくり体を起こしたアッシュはもう一度毛布の中に身を隠した。顔が赤いのは昨日の余韻だろうか。ルークをちらりと見たが起きる様子はなかった。

「あっ…ば、馬鹿野郎!見んな!…っっ寝る!」
「えっ?あ、おい!もうどっちみち起きる時間じゃ…」
「寝る!触んじゃねーよ!」

叫び散らして毛布でまるっと包まってしまった。何か気に触ることでもしただろうか。とりあえずルークを起こしてルークにアッシュは起こして貰うとするか。久しぶりに見た空は2年前と同じだった。



12.02.16





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