今日もまた気が付けばひとり。
どうして意識を飛ばしたのかと思い出すと思い出したくもない記憶だけが蘇る。どうしてあんなに優しかった師匠は今、別人のようになってしまったのか。俺にはわからない。
「起きたか?」
「…!!」
02:また私を置いて行くの?
いつも気持ち悪いぐらいジャストタイミングでやってくる師匠。手には着替えらしきものが。今着てるやつは嫌に固まっていて服の役目を果たしてない。それもこれも全部師匠…ヴァンのせい。痛くて動かない腰を引きずると師匠が俺を小脇に抱えて纏わり付いている衣類を剥いだ。暗い部屋に日光に当たらなくて白くなった俺の肌。そのまま地べたに俺を下ろして、新しい衣類を俺に投げてじっと俺を見下ろした。着ろってことか。11歳男児の服を着る姿をみて何かあるのかわからない。
(下着がねぇ)
ただの嫌がらせな気がするのに、わざわざ脱がすのはしてくれたりとよくわからない。わからないことだらけだ、今の師匠は。仕方なくガウンだけを着て、また地べたにペたりと座った。師匠はこうして俺が無様に力なくへたりこんでいる姿が好きなんだ。だって、師匠の顔を見上げると微妙に笑っているんだ。…師匠の笑っている顔は昔を思い出して、すきだ。
満足したのかまたくる、と言って忘れず格子に鍵を二重にかけた。またそうやって俺を置いて俺の知らない世界へ消えていくのかよ。
12.02.07
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