※現パロガイルク
年越し近い時間。街にはいつも通りの照明が寂しく照っていた。多分今頃は神社、寺に人が溢れる程いるだろう。そんな人の減った道を独り占めできる機会はそうないだろう。
「はぁ…さみぃな、結構」
「帰るか?」
「ん…」
コツコツとブーツを鳴らして家路を目指すルーク。鼻と耳が真っ赤でかわいらしい。
「どうした?ガーイっ」
「悪い悪い。今行く。後ろ姿もかーわい」
「うっせ…」
「後ろ髪の毛ぴょってなってるぞ」
「いつもだろ!ったく…早くかえるぞ」
むくれて速めに足を進めるルークを追いかけて、震える手を擦り合わせた。じわりと熱が発生し、すぐに風に巻かれた。
ボロめのアパート。環境もあんまりよくないけど家賃が安くてこんなとこにした。狭くてもそれが二人の愛の巣みたいで(言ったらルークに照れ隠しに怒られた)俺的には幸せってこんな感じ。
真っ暗な部屋に電気を通して、薄めの明かりがつく。ルークは寒いと上着も脱がずにストーブを付けてもふもふと上着のフードを被る。丸まっててかわいい。
「あったかくならねぇ…」
ぶつぶつ不満を言うルークを宥め、買った蕎麦を食べる仕度。ルークと年を越すのは2回目かな。
「上着脱いどけよ」
「えぇー」
「夜寒くて寝れないぞ?」
「寝ねーし!大晦日はオールしても許されるんだぞ」
「はは…どうせ眠くなるだろ」
「子供扱いすんな!もう大人だ!」
そういえば今月二十歳になったルーク。本当につい最近。一週間もたっていないがルークには大きいことらしい。
「へいへい。蕎麦くーかぁ」
「海老天」
「入れた」
「おーし!さっすがガイ」
結局もふもふとしていて邪魔な上着を脱ぎ捨ててこっちに来るルーク。ちっさいデスクぎりぎりに二つ丼をおいて、ちっさいテレビつけて。紅白はもう終わりに近い。
「コレたべおわんねーよ」
「まぁいいじゃないか。たまには、な」
「んー。天かすとって」
「もうなくなるぞ?」
「いーの。どうせ買ってくるだろ?」
「相変わらず人使い荒いなぁ」
「でも嫌じゃないんだろ?」
「まーな」
すっかり俺を使い慣れているルーク。蕎麦食べながら意地悪い顔してるがそれすらかわいらしい。
談笑しながら蕎麦を食べて、気付いたら除夜の鐘が。今年ももう終わる。
「今年もいろいろあったな」
「…うん」
「ひょやのはね…」
「食べながら喋らない」
「ん、なくなった。ごっそさん」
「はいはい」
102回目の音を、ルークはクッションを抱えながら、俺は食器を片付けながら聞いた。それから俺はルークの隣で一緒に小さい液晶を見る。鐘が映りまた叩かれた。ルークがこてりと体を傾けてきて、俺はそれに合わせて首を傾けた。パズルっぽい。
「あと何回?」
「あー、3回ぐらいかな」
「…そ」
はやく鳴れ、と呟くルーク。暖かい。長い睫毛はけだるそうに伏せられて、瞳の緑を惑わせた。
ボーン…
「…ルーク」
「なんだ?」
「年明けたら、キスしないか」
「っはぁ!?ぅ…なんだよいきなり」
「恋人っぽいことしたい。ルークにはまだ早いか?」
「だから子供扱いすんな!…しゃーねーなしてやるから」
ボーン……
「そうか。ありがとうな」
拒否されると思ったから嬉しい。口を尖らせて、頬を染めて。とろりと緑が見えて、赤に映える煌めきを持った。
鳴る
とルークが呟いた。
ボーン……
「……」
「………ぁ」
「明けた、な」
「…うん。明けましておめでとう」
「明けましておめでとうルーク。…キス、いいか」
「ん…」
隣合っていたでこをごつんとぶつけて。ルークの髪と耳を撫でて。少し赤くなっているルークにキスをした。ディープキスとかじゃなくて、子供みたいにつんつんと。また鐘が鳴った。ルークも少しだけ目を開けて笑った。
今年もルークの笑顔が沢山見れるらしい。
12.01.01
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