▼fearfully


ルーク独白





「!?」

一瞬手が透けたように見えた。
力を込めたら元に戻った。
…生きてる。

*

「ちょっと血中音素が減ってるけど、薬を飲めば大丈夫だって」

怖い
無理に作った笑い顔でその場は濁らせたけど、ジェイドにはばれた。ジェイドの前だなんて関係なしに体が震えて言うことをきかない。ぐっと拳を握り締めて耐えた。
一人部屋でよかった。

いくら毛布に包まって温まろうと震えは止まらなかった。逆に暑さで汗をかくたびに震えは強くなって、息が苦しくて、酷くなるばかりだった。
もうすぐ死ぬって言われたんだ。もう長くは持たないって、近いうちに消えて跡形もなくなるって…。
怖くて堪らなかった。まだ髪が長かった頃ラルゴに刃を向けられたように怖かった。死はすぐ傍まできていた。
ひゅうひゅうと苦しい呼吸を繰り返しているうちにも身体はどんどん熱くなって、意識が朦朧として、それから………


*
妙な場所に立っていた。広い平野。左手には武器を持って、何かを待っていた。 しばらくすると薄暗くなってきて、視界がわからなくなってきた。その中から数人、いや数百、千人を越える声とガチャンガチャンと煩い音が聞こえて、俺は剣を向けてそちらに突っ込んだ。気付けば足場は不安定で走る度に空洞の音が木霊した。敵に突っ込んで---ティアの声がするのに単体で---、剣を奮った。切った敵はぐちゃりと壊れてからもう一度上へ伸びて、こちらを襲ってきた。切りすぎた俺はその数に耐え切れなくて敵の海に呑まれた。
はっとして周りを見渡すと今度は確実な人型が襲ってきて、俺は逃げた。持っていた武器はいつのまにかなかった。足場の悪い地を逃げ回り、暖かい場所まできたが人型は追ってきて。走り疲れた俺はそれでも足を動かして逃げた。足が縺れた。でも、相手のほうが早くてどんどん距離は近付いて…
*


「っあ!」

自分の声にびっくりして目が覚めた。熱い。汗がぼたぼた垂れて全身が震えた。
自然と自分の肩を掴んで丸まって、落ち着こうと努めた。肩に力が入って痛い。喉はカラカラに渇いて声は出なく、短い息しか出なかった。力が抜けて横に倒れた。

「は、っ…、はち…ぃ」

熱い、と呟こうとしたがみっともなく吐く息と混ざって情けない。額にかいた汗が気持ち悪くてもう一度寝ることも叶わず、動くことを諦めた。心音が聞こえて身体がそれに合わせて縦に揺れた。それがとても怖かった。
人肌が恋しい。落ち着いてきて再び睡魔がやってきたが怖くて眠りにつけなかった。今まで助けられなかった人が怖かった。朝までまだ長かった。



11.11.05


補足
ルークの夢の中で足場が不安定なのは白骨化した骨があるからです。ルークが今まで切ってきた人や魔物の…。
暗くて見えてませんがそれはルークが見たくなくて見えないようになってるんです





戻る

TOP





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -