▼僕と君を分かち合った君と



※ルクアシュルク
 R15…?
 ED後


「ねぇ」
「…なんだ」

「したい」

「どっちだ?」

わかってる癖に。
「アッシュが下」

淡々と公務の仕事をこなすアッシュに呟く。自分ではこなせない難しそうな紙切れと睨めっこしているアッシュはこちらを向くでもなく、無機質な声を響かせた。

「は。お断りだな」

かさり、書類をめくる音。何時間も前からかさり、かさり、と響かない乾いた音がこの部屋を支配している。俺はソファに深く座って、時折寝転んで、アッシュを観察する。自分と同じ長さの睫毛、自分より少し濃いめの赤毛、眉間に寄る眉。自分も同じ顔ができるかと言われたら、多分できないであろう。だってすごく綺麗だから。
綺麗なその顔を羞恥で赤く染めたくてしたい、と言ったら断られた。彼はまだ仕事中で邪魔にしかならない思考を遮断するようで、寂しさでは無く温かな気持ちが湧く。手を出そうと席を立とうとすると突然ノック音が聞こえ跳びはねた。アッシュがこっち睨んだ。こぇえ……

「入れ」
「追加でダアトから報告書がきました」
「あんのチビめ…」
「何かおっしゃられましたか?」
「……なんでもない」

どうやらアニスが二つに分けて報告書を送ってきたらしい。隠そうともしない愚痴は昔のままで、懐かしく感じた。まだ二人は顔を合わせれば喧嘩する勢いだった頃。いつ消えるか恐怖に怯え、同時にアッシュを心配したあの頃…。
報告書を持ってきた奴はいつの間にかいなくなっておりアッシュの溜め息が近くで聞こえた。…ん、近く?なにかおかしいと明後日を見ていた視線をアッシュがもといた場所に移そうとすると目の前に見慣れた服が。顔をあげるとしかめられたアッシュの顔が見えて、思い切りデコピンをくらった。

「いてぇ」

口をへの字にしてみると鼻で笑われた。堅苦しく締めていたネクタイをデスクに放り、前髪をかきあげて、舌なめずりをした。正直どきりとした。

「気が変わった。やるか」
「まじで!やった!」
「ああ。お前がひーひー泣きっ面晒すまで鳴かせてやる」
「わー…って、それ俺が下ってこと?」
「ようやく気付いたか?覚悟しろよ」
「えーやだよ!なんで!最初にしたいって言ったの俺なのに!やっ」
「先に手を出したほうが勝ちだ。…狭いから床でするか」

負けた。こうなればもうアッシュのペースで、ここからひっくり返せた経験は無い。

「ばかやろー乳首真っ赤にしてやる」
「馬鹿か?そんな暇ないだろ…っ、くずが…!」

ふるりとアッシュが震えて、ぎゅっと目をつぶる。アッシュの第一弱点と言えばここなのだ、自分も似たようなものだが。まだ脱いでない服が擦れるのがいいのか覆いかぶさっているはずがだんだんと腕の力が抜けていくのがわかった。ついに俺の上に乗る状態になって優越感を感じていると強い刺激があって思わず手を離してしまった。完全同位体とは時には不便であることを思い知る瞬間であった。



11.10.10




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