▼real intention.


※GL



運命とは時に残酷なものだ

薄暗い月明かり。
宿の一人部屋で意識を落ち着かせようにもズボンが透けて見える手が、それを遮って心に波を立てた。手袋を外せば見事に透けていて、音素剥離が目の前で起きていた。手の平、甲の感覚はあるものの指先は意識と同化して感覚は無かった。それでも頬に触れればまだ温かい。まだ、ある。
近くの毛布を引っ張って、頭から被った。薄いながらもあるのとないのとでは違いを感じ、自分を包み込むように手で掴んだ。掴める。そのことに少し安心して肩の力を抜くと毛布は丸みを増した。視界を塞ぎ、自己嫌悪に陥り、同時に自分の運命を少し恨んだ。どうして俺なんかが、レプリカが人様を殺したのか。無知を言い訳になにを撤回しようとしたのか。皆が他人事の様な目をした理由を被験者や周りの人に押し付けて、喚いて、どれだけ迷惑をかけただろうか?それでも俺を気にし続けてくれたティアやガイには相応のものを捧げられただろうか。自分はどうしてレプリカだったのだろう。預言を狂わす道具としてしか生まれてこれなかった。師匠がこの世界を滅ぼす事を考えなければ俺はここにはいないのだけれど、俺はその計画を止めようとしている。最初からホド戦争がなければ世界は平和でいたのに、
考え出すと知識が少ない俺は幾つもの矛盾点があることすら気付かず深い自己嫌悪に陥る。自己嫌悪なんて言葉も最近ジェイドに教えて貰ったばかりで意味があっているかもわからない。ジェイド曰く、゙自分を殺したいぐらいに後悔するこど…らしい。俺の場合は殺したいではなく、消えてしまいたいの方が近いと思うけど。
普段使わない頭を使い知恵熱かのように目尻が熱くなった。最近涙もろくなったとガイにも指摘された。泣くつもりなんて毛頭無いのだが。一粒落ちてしまえば次々と毛布が濡れて情けない声はあがるばかり。怖い。何が。生きていくこと?いや、死ぬこと。意識するとものすごく怖い、畏怖、恐怖。がたがたと手足は震えて、歯はがちがちと噛み合わず音を立てた。息を詰めすぎて過呼吸化し視界がぼやけてくる。
慌ただしく部屋に入ってきて大きな掌で背中をさすってくれている人物を確認すると余計に涙が零れて、その温もりを拒否したくなる。こんなにも温かさを感じていたら死ぬ覚悟すら決められない。

「…ッ ガ、イ……」
「大丈夫か!?ルーク…」

そんな優しい声で囁かないで、

「や……だい、じょぶ 離し…」
「またこんなに泣いて… 俺じゃ力になれないのか?」

昔みたいに心配しないで、

「目も真っ赤じゃないか!擦りすぎだ…ほら、」

まるで当たり前かのように与えられる愛情に負けてしまうから。


「…――っがい!ガイ、俺、怖くて、ガイ、なぁ!」
「ルーク…!」
「一人は怖くて、明日にでも、っ手足は消えそうで、おれ、っひ、死にたくない…!」
「ルーク……、そうか、怖かったんだな。一人は寂しいもんな。大丈夫だ、ルークは消えない。俺がついてる。どこにでもついて行ってやる」
「ガイ…!がい、見て、ほら、透けてるんだ、俺もう、もう…!いなくっな、って、いやだ、いや、怖いんだ!!」
「…っ、……ルーク…、!」

恐怖に呑まれ怯え震える俺の身体をガイは戸惑うことなく抱きしめた。俺はもう泣いて泣いてガイに抱き着いた。怖くて、寂しくて。色々なまとめきれない感情をガイに訴え、縋り、泣いた。ガイは全てを優しく聞いてくれて、励ましてくれて、俺に沢山の愛情をくれた。ガイはシャツがびしょびしょになるまで泣いて、疲れ果てた俺の瞼に唇をおとした。そうして二人でベッドについて、ガイはずっと俺の頭を撫でてくれていた。その日は旅を初めてから一番良く眠れた。明日は、運命の日。


11.09.14




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