▼偶然のうちの奇跡の当然





「エルザ」
「なに?」
「キスして」

いーよ、と一言入れて思い切り抱きしめられてほっぺにキスされた。僕はこの感じというか、雰囲気が好きで、そしてなによりエルザからのキスが好きでよく強請った。エルザは僕が一度で満足しないのを知っているから、何度か唇を押し付けてくれた。顔が自分でもわかるくらいに綻んだ。
最近はこうして甘い、甘すぎる時間を過ごす事も増えた。そりゃあセックスだってしない訳じゃないけど、あれは日時を選ばないとできないし、キスだけでも十分気持ちいい。僕はちゃんと愛されてるって感じられるのが何よりも嬉しい。エルザも幸せそうに笑うから同じ気持ちを共有できてると思う。

僕は一時期こんな右目で愛してくれる人なんていないと現実世界に絶望して、いっそ魔導師に身を任せた方が楽な気すらしていたけど、今はこうして魔導師から逃れてきた甲斐があるものだ。エルザの執着心が強いのも解っているし、エルザならこんな立場の僕を捨てるはずも無い。こんな事を考えていると僕は計算しながらエルザの近くにいるみたいだけど、すべては成り行きであって予想がすべて的中しているだけ。それぐらいに僕はエルザを理解していて、欲していて、愛してる。
世界世間から見たら同性同士がおかしいだの、女性に欲がわかないのは変だの言うかも知れないけど知ったことじゃない。そんな事を言い出したら娘が母親を、息子が父親を好きなのがおかしい、息子は母親に性欲を持たないほうがおかしい、と言ってるようなもの。僕だって父さんが大好きだったもん。誇れる、かっこいい父さん。だから、愛情、友情に性別は関係ないんだ。

ああ、エルザが不満げな顔でこっちをみてた。ごめん、考え事をしていたんだ。機嫌をなおしてよ。

「ごめんってば」
「…ユーリス最近そういうの多いよ」
「エルザが愛してくれるからだよ」
「俺の事考えてたの?」
「うん」

証拠を見つけるには僕の心を覗くしかないからお詫びにほお擦りをしてあげた。僕は抱き合うほうが好きなんだけどエルザはこれが好きらしいからなんだか犬みたいだ。いや、猫?単純な彼はそれで許してくれた。違うな、僕を甘やかしてくれた。 こういう時エルザは僕より年上だなと感じて僕はまだ未熟だと思い知らされる。この時の差もいつか埋まってくれると嬉しいんだけどな。




11.06.12


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