▼些細なことで変わるもの


※n巡目
 ジョナディオはデキてる
 ジョナサンとジョルノ親子キスあり




「失礼しまっす、ジョナサンさん。ジョルノいま……うわっ」
「…………」

 いくらギャングの世界ではプリンスだの悪魔だの言われるぼくだって、たまには甘えたい。包容力に包まれたい。それを叶えてくれるのが、かつての父であるジョナサンだ。抱き合ってたまに頭を撫でてくれたりすると、果てしない安心に心の緊張が取れる感覚がある。

 ベッドの上でそんな絶賛べた甘えの状態を見られるのは、遠慮したかった。それが例え、家族の一員だったとしても。

「ごめんね仗助。いまちょっとジョルノは手が離せなくて」
「……いえ、大丈夫です。どうしたんですか」
 開き直り、ジョナサンに抱き着いたまま仗助に声をかけると、普段とかけ離れた様子に驚いたのかまたは引いたのか、「やっぱ何でもない」と言う。ギャップが凄いと承太郎には言われたが、今回もそれだろう。
「遠慮しなくて良いんですよ」
「あ……、いや、ほんとに大丈夫だから!ごゆっくり!!」

 勢いよく体を翻して出ていく仗助の背中を見つめてひとつ溜め息をつく。ジョナサンがぽんぽんと背中を叩いてくれた。
「きっとそんなに重要なことじゃあなかったんだよ」
「でしょうね」
 広い胸に頭を擦り寄せて父性だか母性だかをめいっぱいに浴びると、体の力が抜けてジョナサンの温かさを感じる。実の母も養父も与えるどころか見せもしなかった愛情を真っ直ぐに注がれるのは恥さえ捨ててしまえばとても心地の良いものだった。

「はは、かわいいなあジョルノは」
「かわいい息子を甘やかしてくださいよ、お父さん」
「もちろん!」
 ぼくが二人くらい入りそうな腕を広げ直して、思いきり抱き締める。極めつけは額や瞼、頬にいくつもキスをくれる。頬が火照るのもそのままにひしりと抱きついてもっともっととせがむ。頬同士をくっつけてすりすりとしてくれた。
 守られている安心感から自然と表情も緩んできてしまりのない顔をしているだろうに、ジョナサンは馬鹿にしたりしない。ディオを愛せるだけあって、ジョナサンの愛情には底がないのだろう。

「ジョルノ」
「ん、」
 呼ぶ声に反応して胸元から顔を上げると、近くにあった唇に口付けられる。あまりにも当たり前のようにするものだから、半ば思考を止めていた頭が動き始めるまで時間がかかった。
「父さん……? なにを…」
「ああ、ごめんねジョルノ。かわいいなぁと思ってつい」
「つい?」
 子供だったとは言え、年齢的に゙かわいいからキスしだはおかしい気がする。嫌悪感はないが違和感がある。
「そんなに子供みたいでした?」
 拗ねた風に言うとジョナサンは大袈裟なくらいに首を横に振る。ぼくが普段子供扱いが嫌だと言っているから、機嫌を損ねないように。全く優し過ぎる。
「あ、違うんだジョルノ、」
「べつに拗ねてませんよ。あなたにべったりしている時点で子供っぽいとは思いますから」
「そうじゃなくて」

 ぼくは事実を言っているだけだから、ちょっとも機嫌を悪くしたりなんかしていない。むしろジョナサンの腕の中にいる間は機嫌が良い方だ。必死になって弁解しなくても、と思いながら口にはしない。

「ジョルノ、こうしてると目がとろんとしてて……、ディオに似ててかわいいから」
「……え?」

 予想外の言葉が出てきて、また頭の働きが鈍くなる。
 緩い顔がディオに似ていると言われてもディオの緩い顔なんか記憶にあるかも危うい。
 となるとそれはジョナサンだけが見ている表情だというわけで、そんな状況限られている。とどのつまり、ジョナサンは全くそんなつもりはなさそうだが、ディオにとってかなり恥ずかしい場面の顔なのではないか。
 そしてその表情に似ていると言われたぼくの顔も大分恥ずかしいものになっているのではないか。いまさらな羞恥心に襲われ、名残惜しくもあるが、ジョナサンや先程いた仗助から見た様子を考え大人しく抱き着くのをやめた。ジョナサンは不思議そうにしている。
「すみません、そんな無防備な顔になってるとは思わず……。父さん、ぼくにキスをしたことはディオには黙っていてくださいね」
「大丈夫だよ。かわいいよ?」
「あの……。恥ずかしいのでそれ以上言わないでください」
「そういうところもディオに良く似てる」
「〜〜〜ッジョナサン!!」

 厚い胸板に腕を突っ張り距離を取ると、パチパチと何度かまばたきしてから抱き寄せ直される。方向の違った恥ずかしさで逆上せてしまいそうだ。

「きみにはそういった気分にならないから安心してよ」
「喜ぶべきですかそれは……」
 抵抗してもすぐなかったことにされるため、無駄な気がしてきて結局止めにした。ひとりでに騒ぎ立てて馬鹿らしいのかもしれない。当然だが息子相手にその気にはならないと宣言もしてくれていることだし、この人のことだからあまり深く考えていなさそうだ。たぶん。

「……ぼくのことをこうしてくれるって言うなら、もう細かいことはいいです。気にしないことにします」
「そう?」
「ええ」

 そう言って抱き着くようにハグをすると、同じようにして大きな掌が背中を柔らかくたたく。邪念は全く感じられない。

「ジョルノ、あんまり他の人にはこういうことしちゃだめだよ」
「……ディオにだってしませんよ。あなただけです、お父さん」
「あはは、ディオがかわいそうだ」
 意図せず口説くような返事になってしまったが、ジョナサンに気にした様子はない。
 実際のところ、ジョナサンの頭の多くを占めているのはディオなのだからなんらおかしくない。
 ただ今日は少しでもぼくのことを見てほしいと思うのは子供としてのワガママか、はたまた新しく感じた気持ちのせいか、区別がつかなかった。





170110



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