▼塩入り砂糖漬け


「エルザ、」
「ん、なに?」
「腕のけて」

そう告げて俺の胸に顔を押し付けてくるかわいい恋人、ユーリスはにこにことしていた。ぎゅう、と俺の背に手を回し身を擦り寄せてくる。綺麗な髪に手をのせ撫でてやると髪が乱れるのが嫌なのか微かに頭を振られた。自然な動作でかぷりと俺の鎖骨に噛み付くユーリス。ちょっと痛い。

「ユーリス……、」
「塩の味がする。エルザ、闘技場行った?」
「あー…うん。さっきセイレン達と。」
「ふぅん?」

首にすりとなすりついてきて、ちゅ。啄むようなキス。けっして深くはならない。俺から舌を入れ込もうにもユーリスから逃れられてしまう。いったい何がしたいのだろう。

「エルザ、口あけてよ」

意図がわからずとりあえず従うと、ユーリスはまた顔を近づけてきた。またキスするのかな、と待ち構えているとユーリスは歯を立てて俺の唇を噛んだ。がりっ、と歯のぶつかる音に俺は顔を歪める。

「っい……た、い」

ユーリスは俺の唇から滴る赤い液体をべろりと舐める。

「ふふ。甘い。」
「いたた…そんなわけないだろ?」
「僕が嘘言ってるって言うの?」
「そうじゃないけどさ。こういう事する時はなんか言ってくれないかな。」
「言ったよ」
「……うん…」

相変わらず微妙にズレているユーリス。いつからこうなったのかなんて忘れたけど今はユーリスが好きだしそんなことは気にかからない。血が滲み未だに痛む唇を舐め、甘えてくる恋人を押し倒し事に及ぼうとすると嫌なのか顔を手で覆われた。

「……う」
「やだ」

嗚呼、なんて我が儘なオヒメサマだろうか。こんな彼でも好きなのだから俺も十分おかしいのかも知れないが。”おあずけ”をくらった俺は諦めて同性にしては細い身体を抱きしめた。



11.05.05


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